星々の輝きを君に
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「なぁに百面相しているんだよ」
言葉とともにディアッカがキラの頭に手を置く。
「僕、プロポーズ、されちゃった」
そんな彼に向かってキラはこう言い返す。
「でも、どう反応していいのか、わからない」
さらにこう付け加えた。
「……なるほどな」
そうすれば、彼は苦笑を深める。
「流石に始めてか」
この言葉にキラは小さく首を縦に振って見せた。
「……あれはプロポーズじゃなかったし」
アスランにも似たようなことを言われた経験はある。だが、どう考えても、あれは恋愛感情とは関係のないものから出た言葉だったのではないか。イザークのそれを聞いた後なら理解できる。
「それ以前に、男の人にそんな感情を向けられるのも初めてだもん」
なかったとは言わないが、とキラは続けた。その瞬間、ディアッカは大きく頷いてみせる。
「流石カナードさん」
虫はくっつく前に全て始末していたか、と彼は呟いた。
「ともかく、それは脇に置いておいてだ」
カナードの判断は正しいだろうし、彼のお眼鏡にかなわなかった人間なら、キラにはふさわしくないのだろう……と彼は言う。
「お前、イザークのことは嫌いか?」
この問いかけに、すぐに首を横に振ってみせる。
「じゃ、一緒にいるのは」
「いやじゃない」
むしろ、安心できるかも……とキラは告げた。
「兄さん達と一緒にいるみたいかな? でも、時々、何故かドキドキするけど」
やっぱり、他人だからだろうか。それとも、別の理由からなのか……と彼女は続ける。
「なら、いいんじゃね?」
この言葉に、キラは彼の顔を改めて見上げた。
「ディ?」
「嫌いじゃないなら、一緒にいても構わないだろう? それに……俺的に言えば、カナードさんとあの人が認める人間なんて他に出てくるかどうかわからねぇし」
それに関しては否定できない。
「何よりも、あいつはいい奴だからな」
間違いなく、キラを大切にしてくれる。それだけは保証する、とディアッカは口にした。
「それに、あいつとケンカしても逃げ込む場所はあるだろう?」
プラントにも、と彼は続ける。
「そうだけど」
エルスマン家はもちろん、ラウもプラントにいる。それに、カナードの性格であれば追いかけてくるだろう。
ムウはきっと『顔を見にプラントに行くから問題はない』と言いそうだし……とキラは心の中で呟く。
「だから、さ。嫌いじゃないなら頷いてやってくれって」
それが言いたかったのだろうか。
「でも……それでいいの?」
プロポーズを受けるって、とキラは問いかける。
「いいと思うぞ」
そう言って、彼は笑う。
「ダメだったとしても、カガリの被害を受けるのは俺だけだ」
さらに付け加えられた言葉の意味がわからない。
「ディ?」
「あいつのことだ。そもそも俺がイザークを紹介しなければ……といいだしかねないぞ」
もっとも、と彼は続ける。
「その前にぶん殴らないといけない奴がいるけどな」
間違いなく、それはユウナ・ロマのことではないだろうか。キラは心の中でそう呟く。
「……いいの?」
だが、最終的に彼は殴られると言うことには代わりがないような気がする。
「構わないって」
だから、自分の気持ちに正直に動け。そう言う彼にキラは小さく頷いて見せた。