星々の輝きを君に

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 バルトフェルド達が戻ってきたのは、それからすぐだった。
 流石の彼も、キラの背後に立っているギナの姿には驚いたらしい。
「ということで、私はこれと話がある。お前はそれらと一緒にいるがいい」
 そんな空気をものともせずにこういう彼は流石だ、というべきだろうか。
「丁度いい。俺の方も貴方に話があったんだ」
 にやりと笑うとバルトフェルドがこう言い返している。
「そう言うことだから、お前らは向こうに行っていろ」
 言葉とともに彼は体の向きを変えた。そのままギナを連れて執務室の方へと歩いていく。
「兄さん達のことかな?」
 キラはそう言って首をかしげた。
「どうだろうな」
 他にもいろいろとありそうだ、とイザークが言ってくる。
「……そういや、あれってまだここにいるのか?」
 ふっと思い出した、というようにディアッカが問いかけてきた。
「あれ?」
「オーブ産の害虫」
 よっぽど彼の名前を出すのがいやなのだろうか。ディアッカはこう言ってくる。それでもわかってしまうあたり、困ったものかもしれない。
「ユウナ・ロマ様でしたら、まだ、営巣においでです」
 確認していたのだろう。ソウキスがこう言ってくる。
「了解。なら、ちょっと顔を拝んでくるわ」
 カガリが来る前にあれこれと確認しておかないとまずいだろう、とディアッカは笑った。
「そう言うことだから、頼むな、イザーク」
 そのまま彼の肩を叩くと視線をソウキスに向ける。
「悪いけど、付き合ってくれ」
 それに一瞬考え込んだ後、彼は「わかりました」と言葉を返す。
「ちょっと!」
 そのまま遠ざかっていく二人に、キラは慌てて声をかけた。しかし、彼らは振り向くどころか足を止めるそぶりすら見せない。
「……なんなんだよ、いったい……」
 なんか、ものすごくわざとらしく思えるのは錯覚だろうか。しかし、それならば、何故、バルトフェルド達も、と思う。何か理由があるのだろうか。そう思いながらキラはイザークを見上げた。
「とりあえず、落ち着けるところにでも行くか?」
 苦笑と共に彼は唇に言葉を乗せる。
「そうですね」
 確かにここで立ち話をしていても意味がない。それに、彼らは今、帰ってきたばかりなのだ。疲れていてもおかしくはない。
「なら、どこに行きましょう」
 部屋でもいいが、と思いつつキラは首をかしげる。
「リビングでも借りるか? あそこなら、ディアッカも終わり次第来るだろう」
 それにイザークはこう言ってきた。
「そうですね」
 確かに、あそこならばお茶の道具もあるし、ゆっくりと出来るのではないか。そう考えて頷く。
「なら、行くか?」
 この言葉にキラは頷いて見せた。
 さりげなく、イザークが手を差し出してくる。一瞬どうするべきか、と思ったが、素直にその手を握りしめる。
「……まったく……ヘタに気を回すから不自然なんだ……」
 ぼそっとイザークが呟く。
「イザークさん?」
 いったい何を、とキラは聞き返す。
「落ち着いたら話す」
 ここでは誰に聞かれるかわからない。イザークは苦笑を深めるとそう言ってきた。
 つまり、人前では出来ない内容なのだろうか。
「……いったい、何をやったのかな、ディ」
 それとも、カナードに何かをされたのか。キラはそう呟く。
「何かされたのは事実だがな」
 イザークは視線を彷徨わせながら言葉を口にする。
「ともかく、落ち着いてからにしてくれ」
 彼がそこまで言うとはよほどのことだろう。
「わかりました」
 だから、キラはこう言って口を閉じた。

 彼の態度が別の理由からだとわかったのは、それからすぐのことだった。


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最遊釈厄伝