星々の輝きを君に

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 作戦前に、と思ってディアッカはバルトフェルドの元へと向かっていた。隣には何故か付き合ってくれたイザークがいる。
「……いったい、いつだ?」
 そんな話し合いをしたのは、と彼は不機嫌そうに問いかけてきた。
「俺も、さっき、聞いたんだって」
 全部、カナードが勝手に進めた作戦らしい、と言い返す。
「キラも、あの人の言うことなら素直に聞くからな」
 自分たちが提案したことであれば、間違いなく警戒をしたはずだ。
 だが、カナードは違う。多少の引っかかりは覚えても『何か理由があるのだろう』といって従うのだ。
 それは、彼女が自分たちを信頼していないのではない。付き合いの長さによる差だと言っていい。
「まぁ、しょうがないな。キラの面倒を一番見ていたのはカナードさんだしな」
 他の誰か――例えば彼女の他の兄たちやサハクの双子――だったとしても、キラは自分たちと同じような反応を返したはずだ。ディアッカはそう付け加える。
「きっと、あれが来るから……だな」
 何かを考え込んでいたらしいイザークが呟くように言葉を口にした。
「それでカナードさんが焦ったのではないか?」
 気持ちはよくわかるが、と彼は続ける。
「そう言ったところだろうな」
 いったいどれだけ危険視されているんだろうか、彼は。そう言いたくなる。
「どちらにしろ、作戦としては一番確実で被害が出ないだろうね」
 双方とも、とバルトフェルドは頷く。
「俺としてもその方が楽だね」
 さっさと戻って、アイシャの顔も見られるし……と付け加えるのは、のろけなのだろうか。
「それでは?」
「敵に塩を送られたような気がするのはちょっと悔しいが……それ以上に、女性を守ることが優先だからね」
 ついでに、青少年が犯罪に走るのを止めるのは大人の役目だ。そう言って彼は笑う。
「ということで、早々に実行しよう」
 そうすれば、それだけ早く対策が取れるだろう……とバルトフェルドは付け加えた。
「ありがとうございます」
 あまりに物わかりがいい彼に、少しだけ不審を覚える。だが、キラのためであれば妥協するしかないか、とすぐに思い直す。
 ムウとカナードが合流してくれば、何があっても彼女だけは守ってくれるだろう。
 問題があるとすれば、アスランの執着心だけか。
「そういや、あっちにはカガリがいたな」
 ふっと思い出したようにこう呟く。
「キラの従姉妹がどうかしたのか?」
 イザークがこう問いかけてくる。
「アスランの天敵だよ」
 ある意味、とディアッカは笑う。
「あの二人が顔を合わせるとすごいことになるらしい」
 残念だが、自分は目にしたことがないが……と彼は続けた。
「そうか。それならば、是非ともキラの側にいて貰わないとな」
 もっとも、とイザークは苦笑を浮かべる。
「できれば、しばらく時間が欲しいが」
 そう言う女性であれば彼女を独り占めしそうだ。ひょっとしたら、話しもできなくなるのではないか。そう続ける。
「まぁ、それは大丈夫だろう」
 いくら民間人でも、すぐにあの艦から移動させるわけにはいかない。それなりの手続きは必要だろう。
 そのためにどれだけの時間が必要かは、こちらの都合次第だ。だから、必要なら長引かせよう。その間に、さっさと話を進めてしまえ……とバルトフェルドは笑う。
「というわけで、頑張るんだな、青少年」
 その言葉にイザークが居住まいを正す。
「もちろんです」
 そのためにもまずは今回の作戦を成功させなければいけない。
「……イザークとキラがくっつけば、俺が殴られるかもしれねぇな」
 カガリに、とディアッカはため息をつく。
「そうなる前に、キラを味方につけておくか」
 自分の身の安全を確保するにはそれしかないかもしれない。そう呟いてしまうディアッカだった。


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最遊釈厄伝