星々の輝きを君に
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そのメールの存在に、キラはすぐに気が付いた。
「……兄さんったら、また無茶な事を……」
もっとも、不可能ではないが……と、口の中だけで付け加える。
それに、彼がこう言ってきたのだ。何か緊急をようする理由が出来たのではないか。
「とりあえず、あの船のシステムを全て掌握してしまえばいいんだよね?」
あちらからのコマンドを受け付けないようにしてしまえばいい。
それならば、そう難しくはないだろう。
ただ、問題なのはタイミングではないか。
「……兄さん達がいるから大丈夫かな?」
あちらの乗組員に関しても、バルトフェルドが適切な処分をしてくれるだろう。ムウのことに関しては、ギナに任せればいいのではないか。
「僕が考えても、そこは仕方がないから、出来る人に任せてしまえばいいか」
あれこれ悩んで時間を失っては、カナード達の安全に支障が出るかもしれない。そう心を切り替えると、キラはパソコンを引き寄せた。
「ごめん。しばらく集中するから」
傍にいるソウキスに向かって断りのセリフを口にする。
「わかりました。二時間経ったらお呼びいたします」
そう彼は言い返す。
「……まぁ、そのころには目処が付いているはずだからね」
本当は終わるまで声をかけて欲しくはないのだが、とキラは苦笑と共に口にする。しかし、彼の方もギナ達から何かを言われているのだろう。だから、妥協するしかないか、と心の中で呟く。
同時に、立ち上がったパソコンのキーボードを叩き始める。
組み立てるためのツールを呼び出すと、脳内で思い描いたプログラムを構築していく。
ウィルス自体は何度も作り上げている。
そして、地球軍のシステムも関わったことがあった。
だから、明日の朝までには最終チェックまで終わらせることが出来るだろう。
キーを叩く指を止めることなく、キラはそんなことを考えていた。
「ということですから」
事後承諾という形でカナードが報告をしてくる。
「……お前、な」
深いため息とともにムウは口を開く。
「そう言うことは、事前に教えておけ」
止めないから、と彼は続けた。
「そんな時間、ありませんでしたから」
即座にカナードがそう言い返してくる。
「あれが来る前にあちらに合流をしておかないと」
きっと、ラウも一緒だろう。しかし、彼は立場上、キラだけに意識を向けているわけにはいかないのではないか。
「兄さんのことは、ギナ様が責任を持ってくださるそうですから」
きっと、他の捕虜達のような扱いは受けないのではないか……と彼は付け加えた。
「それはそれで怖いがな」
後で何をさせられるかそれが想像付かない、とムウは深いため息をつく。
「それについては諦めてください」
キラの身の安全の方が最優先だ。カナードはそう言いきる。
「それは否定しないが、な」
特に、アスラン・ザラがキラの側にやってくるとなれば、少しでも彼女の周囲に動ける人間を集めておくべきだろう。
しかし、だ。
「個人的に言わせて貰えば……色々と複雑だがな」
キラが一番大切だ、という気持ちは今でも変わらない。しかし、それ以外にも大切な存在が出来てしまったし……と心の中で呟く。
「なら、さっさ話をして仲間に引き込むか、それとも切り捨てるのか。その判断をしてください」
自分としては、反対をするつもりはないが……とカナードは意味ありげな笑みを浮かべる。
「あらららら……ばれてたか」
まぁ、自分もいい年齢だしなぁ……とムウは笑う。
「彼女なら、ナチュラルだろうとコーディネイターだろうと気にしないでくれそうだし」
問題は、キラ優先の自分たちを受け入れてくれるかどうかだけだ。そう付け加える。
「まぁ、キラの方も預けても良さそうなのがいますからね」
当面は、とカナードは付け加えた。
「デュエルのパイロットか」
それにディアッカだろう? とムウも頷く。
「本当。キラと一緒に落ちてくれたのがその二人でよかったな」
アスラン・ザラだったら、もっと厄介な状況になっていたに決まっている。
「ともかく、あちらとすこしでも早く合流はしたいが……キラに、なぁ」
後で、ラウのイヤミの一つや二つ、覚悟しておかないとな……と呟けば、カナードも覚悟をしていたのか。苦笑を深めていた。