星々の輝きを君に

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 地球に降りれば、キラに会える。
 しかも、だ。今までと違って別々の場所にいるわけではない。だから、いつでも好きなときに話が出来るのではないか。
「連中が邪魔をしなければ、だがな」
 特に、ディアッカとイザークだろう。
 他の者達も彼らの味方だと言っていい。それでも、自分の行動を邪魔する事はないのではないか、と思う。
「まぁ、ディアッカはしかたがないのか」
 キラの従兄だ、ということは事実らしい。そして、幼い頃からカナードの鉄拳制裁を受けていたらしいのだ。そう考えれば、彼の指示に従わざるを得ないという気持ちも理解できないわけではない。
「……あの人は怖かった」
 子どもの頃、どれだけ彼に怒鳴られたことか。それを思い出すだけで、ため息が出てくる。
 同時に、滅多に顔を見なかったパトリックや自分のことを気にかけてくれてはいたが忙しかったレノアの代わりに、自分をしつけてくれたのは彼やキラの両親だったと言っていい。
 しかし、だ。
「それとこれとは別問題でしょう?」
 自分がキラを『必要だ』という気持ちを邪魔することは、誰にも出来ないはずだ。
「そもそも、貴方が、あの時、俺たちを引き裂かなければ……」
 自分たちを取り巻く状況は変わっていたのではないか。そう思わずにいられない。
「誰が邪魔しても、俺は、キラを手に入れますよ?」
 たとえ、どんな手段を使ってでも……と彼は続ける。
「キラは、俺の傍にいなければ、ダメなんだ」
 昔から、そうだったから、と呟く彼の表情は、とても暗いものだった。

 その様子をラウはしっかりと見ていた。
「本当に、困ったものだね」
 今からでも追い返すべきか、とため息をつく。
「何で、あいつは、あそこまで彼女にこだわるんですか?」
 隣で聞いていたミゲルがこう問いかけてくる。
「さぁ、ね。私が聞きたいくらいだ」
 想像だけは付いているが、と心の中で呟く。
「ともかく、彼から目を離さないでいてくれるかな?」
 流石に、軍規違反で処分をしたくはない……と苦笑と共に告げる。
「今のままだと、危ないですね」
 ため息とともにミゲルは呟く。
「しかし、あれを止めるのは至難の業だと思いますよ?」
 あそこまで暴走していると、と彼は付け加える。
「わかっているよ。後は、イザークのがんばり次第、と言うところかな?」
 どうやら、ようやく踏ん切りが付いたようだからね……とラウは笑った。
「やっと、ですか」
 ミゲルがあきれたように言葉を口にする。
「まったく……あいつも鈍いったら……本気で、ディアッカと足して二でわると丁度いいような気がしませんか?」
「どうだろうね」
 普段の言動によらず、ディアッカも実は真面目だ。ただ、彼の場合、父親に反発してわざとあんな言動をとっていると言ってもいい。でなければ、この非常時とはいえ、キラを任せるわけがないだろう。
 だが、彼も含めた者達が誤解してくれているならば、それはそれでいい。それが隠れ蓑になるだろう。
 後は、何が出来るだろうか。
 キラをブルーコスモスに渡さないことはもちろん、アスランにも渡せないのだ。
「いっそ、彼を帰して貰ってもいいかもしれないね」
 あちらから、と呟く。
「隊長?」
 何か言いましたか? とミゲルが問いかけてくる。
「早々にアスランを隔離する方法を考えていただけだよ」
 微笑みと共にこう言い返す。
「でなければ、彼を送り返す口実がないか、だね」
 本当に厄介だ、とラウは深いため息とともに告げる。
「とりあえず、根回しの方は?」
「責任を持ってやっておきます」
 即座に彼は言い返してきた。それにラウは微笑む。
「戦闘にだけ集中させて貰いたいものだよ」
 それは間違いなく彼の本音だった。


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最遊釈厄伝