星々の輝きを君に
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「キラに縁談、ね」
誰がそのような馬鹿なことを言い出してくれたのか、とラウは冷たい口調で告げる。
「とりあえず、ウズミ様に連絡、だな」
もっとも、その答えを待っている余裕はないだろう。自分たちもまた、地球に向けて出発するように命じられたのだ。
「できれば、アスランは置いていきたいところだがね」
地上に降りれば、キラ達と合流することになる。
だが《クルーゼ隊》としてあちらに合流すれば、どうしてもアスランとキラを会わせなければならないだろう。
ラクス・クラインとの婚約で、少しはキラへの執着が薄まるかと思っていたが変わらなかった。いや、さらに悪化しているのではないか。
それはどうしてなのか。
理由が知りたくて彼がプラントに戻ってからの生活を調べさせたこともある。
はっきり言って、あきれるしかない。同時に、これではあの子に執着し続けても仕方はないのか、とも思ってしまった。
それもこれも、全てパトリック・ザラの指示によるものだ、と聞いた瞬間、頭痛を覚えたほどだ。
一瞬、彼を暗殺したくなったことも否定しない。
しかし、それでは本当の意味でキラの安全を確保することは出来ない。それがわかっているから、あえて手は出さなかったのだ。
「とりあえず、アスランに彼女のことを諦めさせる方法を考えといけないね」
幸い、彼にはまだ、自分の正体はばれていないらしい。
ならば、別方面からアプローチをすることが可能なのではないか。
「何にせよ、イザーク次第、だろうね」
最大の問題があると知れば、キラがその手のことに鈍いと言うことだろう。それは、傍にいたのがカナードだから仕方がないとも言える。
「あの子はあの子で、困ったものだね」
キラを守るように言ったのは、間違いなく自分たちだ。しかし、あそこまで依存して大丈夫なのか。
だが、同じようにカガリにも接しているから、アスランの二の舞にはならないだろう。
「あの子があれと同じになったら、私たちの手には負えないからね」
苦笑と共に付け加える。
「それよりも、アスランだ」
さて、どうするか。彼は本気で考え込んでいた。
目の前にストライクがいる。
「……カナードさん?」
何故、と思う。
『キラに縁談がでたそうだ』
バカ曰く、と彼は声をかけてくる。
「……キラに?」
いったい、どこから……と思わず聞き返してしまう。彼女は今、ザフトの基地で保護されているのではないか、とも思う。
『セイランのバカからだ。ギナがつぶしにいているはずだがな』
キラの才能を他の連中にとられまいとしてのことだろう、と彼は続ける。
『それだけではなく、ラウ達もこちらに来るそうだぞ』
先ほど、連絡があったが……と彼は続ける。
自分たちの耳にもまだ届いていないそれを、彼はどうやって入手するのだろうか。そう思わずにはいられない。
だが、それ以上に気になったのは《キラの縁談》だ。
「……あいつを欲しがっているのは、誰です?」
オーブの人間ではないだろう。そう判断をして問いかける。
『それなりに判断力は成長しているようだな』
満足そうに彼は笑う。
『なら、いいことを教えてやろう』
その言葉に、逆に不安を覚えるのはどうしてか。あるいは、あの日々が関係しているのかもしれない、とイザークは思う。
『あいつはかなり鈍いからな。黙ってみていると、脇から誰かにかっさらわれるぞ』
それもこれも、あのバカのせいだが……と彼は吐き捨てる。
「アスラン、ですか?」
普通であれば真っ先に除外すべき相手だ。だが、あの様子では、と思いながら問いかける。
『不本意だがな』
本当に、どうしてくれようか。彼はそう言う。
『暗殺できれば、一番簡単だが……そう言うわけにもいかないだろうし』
彼ならば、その気になれば簡単にやるだろう。しかし、パトリック・ザラの性格を考えれば、絶対にやめて欲しいと思う。
『だから、早々に誰かに盾になって欲しいところだがな。お前でダメならば、とりあえず、ディアッカでも構わないが』
彼であれば親の許可も取りやすいだろう、と彼は続ける。
つまり、そう言うことか……とイザークは心の中で呟く。
「それは、俺が玉砕してからにしてください」
とりあえず、アスラン達が来る前にキラに許可を貰わないと、と心の中で呟く。後は、母に連絡だろうか。
『あまり時間はないぞ』
それは遠回しな許可なのだろう。
「善処します」
とりあえず、デュエルを破壊されないことがかもしれないが。心の中でそう付け加えていた。