星々の輝きを君に

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 ユウナを簀巻きにして独房に放り込んだ後でキラはようやくギナ達に呼ばれた。
「大丈夫だった?」
 即座にアイシャが問いかけてくる。
「僕は隠れていただけですから」
 実際に、ユウナと顔を合わせたわけではない。だから大丈夫だ。そうキラは言い返す。
「でも……縁談って……」
 しかも、あの口調から判断すれば、相手はナチュラル――しかもブルーコスモスよりの人物――だろう。
「心配するな。お前の意志が最優先だ、と皆が知っている」
 ギナはそう言って微笑んでみせる。
「ただ、お前一人なら簡単に言いくるめられる、と考えたのだろう」
 あるいは、強引に事を進められると思ったのか。どちらにしろ、キラの意志を無視しての行動だ。
「まったく……そんなことをしたら、自分の命がないとわからないのか」
 わからないからこそやったのだろうが、とギナは吐き捨てる。
「……ギナ様……」
「安心しろ。真っ先に手を出すのはミナかカガリだ」
 自分は傍観するし、カナード達はイヤミを言うぐらいだろう。彼はそう言って笑った。
「もっとも、これから戦場に連れて行くからな。あいつにその気力が残っているかどうか、わからないがな」
 楽しみだ、と彼は笑みを深める。
「その間に、お前は偽装でもいいから、婚約しておけ」
 後で破棄しても構わないだろう、とギナは言う。
「ですが……」
 そう言われても、すぐに相手が密勝つわけではない。
「何なら、私を……と言いたいところだが、それでは偽装だとばれるからな」
 残念だ、とギナは深いため息をついた。
「こうなるとわかっていれば、さっさとあの三人を納得させておきべきだったか」
 さらに彼はこんなセリフを口にする。
「……ギナ様」
「もちろん、お前に他に好きな相手が見つかれば解放してやるが……」
 そうでなければ、そのままでも自分は構わないぞ……と付け加えられたのは冗談なのだろうか。
「あら、キラちゃんには好きな人がいるでしょう?」
 アイシャが微笑みと共に口を挟んでくる。
「プラントの人間でも構わないようだし?」
 そう言われて、真っ先に顔が浮かんだのはディアッカではなくやはり――と言っていいのだろうか――イザークだった。
 しかし、何故、彼なのか。
 キラはそれを考えようとする。
「確かに、イザークさんは優しいし、礼儀正しいけど……」
 それだけならば、別の誰かでもいいのではないか、ディアッカはともかく、ニコルだって……とガモフであった人たちを思い出しながら呟く。
「まぁ、頑張ってね」
 他人事だとわかっているからか。楽しげな声音でアイシャが言う。ひょっとして、これは応援して貰っているのだろうか。
「そうだな。気付かないなら、それでも構わないぞ」
 自分が立候補するだけだ、とギナはギナで付け加える。
「ともかく、今しばらく、この子を預かっていて貰って構わないか?」
 この調子では、間違いなくブルーコスモスも一枚噛んでいるだろう。ユウナが失敗した以上、連中が出てきたとしてもおかしくはない。
 その場合、戦場にいる自分が完全にフォローすることは出来ないはずだ。
「こうなるとわかっていれば、あの二人を早々に呼び戻しておくのだった」
 まぁ、とため息とともに付け加える。
「これから、あの三人が乗り込んでいる艦を拿捕すれば同じ事だな」
 そうなると、ユウナは邪魔か……とギナは考え込む。
「何なら、あれもそのまま預かっておく?」
 アイシャがそんな提案を口にした。
「やめておこう。それこそ、ブルーコスモスが動き出す」
 いっそ、貨物にして本国に送り返すか。それはそれで楽しそうだ、と彼は呟いた。


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最遊釈厄伝