星々の輝きを君に

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 アークエンジェルの居場所がわかった。
 その報告と共に出撃の準備が始められる。
「……ディ……イザークさん……」
 ただ一人、キラだけが不安をかき消せないようだ。それはきっと、カナードのことを心配しているのだろう。
「大丈夫だ、キラ。あの人のすごさはお前が一番よく知っているだろう?」
 だから、的確な判断をしてくれるはずだ……とイザークは笑う。
「そうそう。あの人のことだ。きちんと状況を判断してくれるって」
 自分たちがどの機体に乗っているのか、彼は知っているはずだ……とディアッカも頷いてみせる。
「まぁ、教育的指導は覚悟して岡ねぇといけないだろうけど、さ」
 色々な意味で、と付け加えたのは、彼なりにキラの気持ちを楽にしようとしてのことか。
「お前の側にはあいつがいるからな。何があっても、隠れていればいいだろうし」
 ブルーコスモスにしても、バルトフェルドの拠点を直接攻撃するにはかなりの損害を見込まなければいけない。それをする余力があるだろうか。
「あのバカが乗り込んでくる可能性はあるが……ギナ様がそれなりの対処をしてくださっているから大丈夫だろう」
 それは心配するな、と彼はキラの頭にそっと手を置く。
「いいか? 何があっても、あれには付いていくな。でないと、厄介なことになる」
「わかっている」
 そこまで子どもじゃない、とキラが頬をふくらませた。
「そうそう。私も傍にいるから心配しないの」
 そんな彼女を背後からアイシャが抱きしめる。
「害虫はきっちりと退治するから安心していいわよ」
 くすくすと彼女は笑いを漏らす。
「……お願いします」
 イザークはそう言って頭を下げる。
「任せておいて」
 うふふふふ、と彼女は笑みを深めた。その微笑みの裏に別の意味が隠されているような気がするのは錯覚ではないだろう。
 ひょっとして、自分は頼んではいけない相手に頼んでしまったのだろうか。
 ふっとそんな不安がわき上がってくる。
 それでも、この場合、彼女以外に頼めないと言うことも事実だ。
「出来るだけ早く、カナードさん達と合流できるようにする。だから、待っていてくれ」
 そんな不安を押し殺して、イザークはキラへと微笑みかける。
「でも、無理はしないでね?」
 真摯な表情で彼女がこういう。それにイザークは頷いて見せた。

 小さなため息とともにキラは手を止める。
「姫?」
 それに気が付いたのだろう。ソウキスが即座に問いかけてくる。
「喉が渇いちゃった」
 彼に心配をかけたくなくてキラはそう告げた。
「わかりました。今、何か飲み物を用意させて頂きます」
 ご希望は、と彼はきまじめに問いかけてくる。
「甘いものがいいな」
 苦笑と共にキラはそう言う。
「わかりました。しばらくお待ちください」
 言葉とともに彼はきびすを返す。そのまま部屋を出て行こうとしたときだ。
「キラちゃん、お茶にしましょう?」
 ノックの音と共にアイシャの声が響いてくる。
「姫?」
「開けてくれる? そうしたら、一緒にお茶をしよう」
 ね、と付け加えれば、彼はどうすべきかというように首をかしげた。
「こう言うときは頷くのが礼儀だよ」
 仕事がないのなら、と彼女は笑った。
「わかりました」
 そうすれば彼は頷いてみせる。そして、行動を開始した。
 彼がドアを開ければ、両手にお盆を持ったアイシャの姿が確認できる。そんな彼女の手から、彼はすぐに荷物を受け取った。
「ありがとう」
 微笑みながら彼女はそう言う。
「いえ」
 当然のことです、といい返す彼に、アイシャは苦笑を浮かべる。
「本当に、この十分の一でもいいからアンディも真面目になってくれればいいのに」
 困ったものね、と言いながらも、その表情は別の意味を告げていた。
「バルトフェルドさんも、真面目なときは真面目でしょう?」
 うちの一番上の兄のように、とキラは言い返す。
「まぁ、ね。嫌いになれない程度には真面目よ」
 くすくすと笑いながら、彼女はソファーへと腰を下ろした。
「イザーク君はものすごく真面目なようだけど」
 そして、こんな言葉を口にしてくれる。
「何で、イザークさん」
 そう言い返しながらも、キラは自分の頬が熱くなるのを感じていた。


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最遊釈厄伝