星々の輝きを君に

BACK | NEXT | TOP

  60  



 その情報はカナード達の元にももたらされていた。
「何を考えているんだ、あいつは」
 ムウがそう言いながら、二人を見つめてくる。
「あのバカが、今、どんな思考パターンをしているのか、俺は知らないからな」
 しかし、二人――特にカガリ――は知っているだろう? と彼は続けた。
「何も考えていませんよ」
 それに、カナードはこう言い返す。
「って言うか、ガキの頃と何にも変わっていません。むしろ悪化していますね」
 カガリもまた、吐き捨てるように言葉を口にする。
「特に、キラのことに関してはな。だから、あいつや兄さん達がヘリオポリスに移住することになったんだ」
 気に入らない、と彼女は続けた。
「そう言うな。おかげで、あいつの顔を見ずにすんだからな」
 足を踏み入れると同時に連絡が来る。おかげで早々にキラを逃がすことが出来た。カナードはそう言い返す。
「お前には不幸だったかもしれないが、キラにとってはよかったと思うぞ」
 あれとの接触が最低限以下に制限できて、と付け加えた。
「……それは否定しませんが……」
 でも、自分が会えないのがいやだ……とカガリはあくまでも主張をする。
「なら、さっさとあいつをどうにかしろ。お前でなければ出来ないことだ」
 そうすれば、自分たちはオーブに帰ることができるだろう。カナードはそう言って笑った。
「もっとも、プラントに行く可能性もあるがな」
 ふっと思いついた、というように彼は付け加える。
「はぁ?」
 どういうことだよ、とカガリが詰め寄ってきた。
「あいつの所か?」
 ムウはムウでこう問いかけてくる。
「あいつも年頃ですからね。あちらに気になる相手がいるだけです」
 使節団で訪問したときに出逢った、とカナードは笑う。
「ディの親友だそうですよ」
 さらにこう付け加える。
「あの害虫よりは何百倍もましなので、後はあの子次第、ということにしてあります」
 少なくとも自分は、と告げれば、カガリの表情が強ばっていく。
「今もあの子の傍にいる。つまり、あの人も許可を出したと言うことだろうな」
 でなければ、ディアッカの親友であろうと何であろうと、ラウの権限で遠ざけられていたはずだ。あの害虫アスランのように、と言外に付け加える。
「……あの人も、か」
 でも、とカガリは拳を握りしめた。
「私は認めないからな!」
 まだ、と彼女は叫ぶ。
「わかったから、ちょっと落ち着け」
 ため息とともにムウが言う。
「そうだな。ギナ様も既に手を打っておいでのようだし」
 くすり、と笑ってみせる。
「……ミナは本国だろう?」
 いやそうにムウが言う。
「誰が、あれを止めるんだ?」
 自分はやらないぞ、と彼は言い切る。
「……大丈夫、だと思うが……」
 カガリも頬をひきつらせながら言った。
「キラがいるならな」
 ギナもキラを可愛がっている。その彼女に被害が及ぶようなことだけはしないだろう。
「もっとも、あれの命の保証はしないが」
 八つ当たりの対象にはなるかもしれない。もっとも、それでも自分たちは困らないが、とカナートは言う。
「まぁ、それはいいんじゃないか?」
「だな。入院していれば馬鹿なことは出来ないだろう」
 誰もユウナをフォローしようとはしない。それこそが、彼が皆にどう思われているかの証拠だろう。カナードはそう呟くと唇の端を持ち上げた。

BACK | NEXT | TOP


最遊釈厄伝