星々の輝きを君に

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 ソウキス。
 地球軍――いや、ブルーコスモスと言うべきか――によって生み出された、戦闘のためのコーディネイター。
 その存在は知識としては知っていた。しかし、実際にその存在を目にするのは初めてだ。
 彼の視線に気付いたのだろうか。
「イザークさん?」
 どうかしたのか、とキラが問いかけてくる。
「いや……何故、彼らがサハクにいたのか、と思っただけだ」
 ナチュラルと共にいるならばともかく、と言外に付け加えた。
「廃棄されそうになった我々を姫が見つけてくださったから、です」
 それに言葉を返してきたのはキラではない。傍にいたソウキスだった。
「実際に我々を拾い、側においてくださったのはミナ様とギナ様ですが、姫がおいでにならなければ、廃棄されていたでしょう」
 彼の言葉に、キラは視線を彷徨わせ始める。
「ハッキングしたんだな?」
 問いかけではなく確認だ。そのくらいであれば、彼女は何の苦もなく――しかも、相手に気付かれずに――行うことは、既に知っている。
「何にせよ、それも同胞だ。生きていてくれて悪いはずがない」
 どのような生まれをしようと、とイザークは笑う。
「イザークさん?」
「それに、ロンド・ギナ・サハクではないが、そいつがお前の傍にいてくれれば俺たちも動きやすい」
 カナードと連絡を取ることも含めて、と続けた。
「兄さんと?」
 どうやって? とキラは首をかしげる。
「戦場に出てくるだろうからな。そこでなら、見つけやすい」
 ここの隊長はクルーゼではない。だから、内密に話を進めるのにはその方がいいだろう。彼はそう続けた。
「バルトフェルド隊長にご迷惑をかけるわけにはいくまい」
 この言葉でキラはとりあえず納得をしてくれる。
「そう言うことなら、仕方がないね」
 自分がやった方が早いような気はするが、とキラは付け加えた。
「そう言うな。お前はとりあえずここで大人しくしていてくれ」
 それが一番だ、と口にしながら、そっと彼女の頬を撫でる。
「お前がそうしてくれていれば、俺たちが安心できるからな」
 彼の言葉に、キラは小さく頷いて見せた。

「しかし、ソウキスといっても普通の人間に見えるが……」
 イザークはディアッカに向かってそう告げる。
「あいつは一番ましな状態で保護されたから、だそうだ」
 まだ、微かとはいえ自我が残っていた。だから、わかりづらいが感情もある。
「他の連中は、それこそロボットのようらしいぞ」
 カガリの言葉では、と彼は声を潜めながら告げた。
「あいつにしても、ナチュラルに銃口は向けられないようだし……でも、キラを抱えて逃げる体力はあるはずだからな」
 そう言う指示を受けているだろうし、とさらに言葉が重ねられる。
「そうか」
 おそらく彼が人間らしく見えるのは、キラ達があれこれと教え込んだからなのだろう。きっと、それなりの努力が必要だったのではないか。そうも思える。
「しかし、ユウナ・ロマ・セイランね」
 見つけたら攻撃してもいいよな、とディアッカは笑う。
「……そいつが何をしたんだ?」
 セイランが大西洋連邦にすり寄っているというのは有名な話だ。しかし、それだけではないような気がする。
「一歩間違えば、キラがあいつらみたいになってたってことだ」
 ついでに、あのバカにキラがおもちゃにされていたかもしれない。いや、本人は未だにそれを諦めていないのではないか。
 彼が口にする言葉を耳にするうちに、イザークは手の中の工具をへし折っていた。
「なるほど……そう言うたぐいの《バカ》か」
 相手が誰であろうと許し難い。まして、キラをそのような対象としてみているのであれば、無条件であの世に送ってやりたくなる。
「後で顔を確認するか」
 調べようと思えば資料の一つや二つ、落ちているだろう。
「あぁ、それなら写真を見せてやるぞ」
 にやりと笑いながらディアッカが口を開いた。
「カガリ作成の危険人物一覧、って言うのがあるからな」
「そうか」
 それは楽しみだ。そう言ってイザークは頷く。
「もっとも、そのあたりのこともカナードさんと相談しないといけないだろうが……」
 あちらに何か考えがあるのであれば迂闊に手出しできない。その言葉にイザークは頷いて見せた。

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最遊釈厄伝