星々の輝きを君に
55
キラと再会できたのは夕食の席でのことだった。
「……キラ、その服は?」
別れる前に着ていたものとは違う服を身につけている彼女に、思わずこう問いかけてしまう。
「アイシャさんから借りたんだけど……やっぱり、似合わないよね?」
こういう服は、とキラは続ける。
「いや、似合っている」
即座にイザークはこう言い返してしまった。その後で、自分が何を口走ってしまったのかに気付いてしまう。
「イザーク、さん?」
あの、といいながらもキラの顔が赤く染まっていく。
そんな彼女に何と声をかければいいのか。イザークにもすぐに答えが見つからない。
というより、彼女のそんな表情を見てしまったら自分も頬が熱くなってきてしまったのだ。
ある意味、いたたまれない空気が周囲を包み始める。
「まったく……ほめられたんなら、素直に喜んでおけってぇの」
そんな空気を壊したのは、もちろんディアッカだ。
「イザークは、こう言うときにお世辞を言う人間じゃねぇからな」
だから素直に受け止めておけ、と彼は笑いながら、キラの頭に手を置いた。
「カナードさんだって『ダメだ』とは言わないはずだ」
しかし、そう言う色も似合うんだな……と彼は感心したように呟く。
「ということで、チェックしておけよ?」
視線をイザークに向けてくると、ディアッカは笑う。
「わかっている」
本当に、こいつは抜け目ないと言うべきか。細かいことによく気が付くと言うべきか。もっとも、そのおかげで助かっていると言うことも否定できない。
「……二人とも、どうしたの?」
何を言っているのか、とキラは首をかしげている。
「明日、日用品を買ってこい、とさ」
キラの服も当然その中に含まれている、とディアッカは笑った。
「僕の?」
こう言って、キラは首をかしげる。
「そう。流石に借りてばっかりだといやだろう? 親父からも兄貴からも『必要以上の分を用意しろ』と言われているからな」
予算も出してくれると言っていたし、と彼は笑う。
「だから、甘えていいんだぞ? お袋が飛んでこないだけましだと思え」
こう締めくくるディアッカに、キラは何度も首を縦に振って見せた。
「……そんなにすごいのか?」
エルスマン夫人は、とイザークは思わず問いかけてしまう。
「うちは男二人だし、カガリにはカガリで手をかけてくれる相手が山ほどいるからな。そうなると、お袋が遊べる対象はキラしかいないんだよ」
だから、季節ごとに結構送り付けていたらしい。その言葉に同意するようにキラは苦笑を浮かべていた。
「ともかく、それについても食事の後にゆっくりと話し合えばいい」
ようやく、いつもの自分に戻ったのではないか。そう思いながらイザークは口を開く。
「そうだな。店についても確認しておかないといけないし」
出来るなら、案内してくれる人が欲しいよな……とディアッカも頷く。
「別に、僕は一人でも……」
「それだけは却下」
キラの言葉に、即座にディアッカが言い返す。
「俺にカナードさんに殺されろ、というなら別だけどな」
さらに彼はこう付け加えた。
「いくら兄さんでも、そこまでは……」
キラはそう言って彼を見上げる。
「わからないぞ。あの人達も近くに落ちたんだ。ひょっとしたら、街で出逢うかもしれん」
カナードなら、連中に気付かれないように艦を抜け出すぐらい平然とするだろう。こう言えば、二人とも納得したという表情を作った。
「ということで、一人で行動するなどと言うことは考えるな」
自分たちの命が危ない、とイザークも真顔で言う。
「……そこまではしないと思うんだけど……」
でも、カナードだから……とキラはため息をつく。
「そう言うこと」
ということで、飯にしようぜ……とディアッカは彼女の頭を軽く叩いた。
「……僕は子どもじゃないんだけどな」
本当に、みんな、過保護……とキラは呟く。それでも、背中を押せば、素直に歩き出した。