星々の輝きを君に

BACK | NEXT | TOP

  48  



 振動が伝わってくる。
「何?」
 宇宙空間でどうして、と思う。あるいは、誰かが拾ってくれたのだろうか。そう心の中で呟いたときだ。
『無事だな、キラ』
 不安そうに問いかけてくる声が誰のものか。すぐにわかった。
「イザークさん?」
 しかし、どうして彼が……とは思う。
『大丈夫そうだな』
 だが、ほっとしたような声音でそう言われては問いかけられるのもはばかられる。
「僕は大丈夫です。イザークさんは?」
 代わりに明るい声を作って言葉を返す。
『このくらいで、俺がどうこうなるわけがないだろう?』
 言葉とともに彼が笑った気配が伝わってくる。
「よかった」
 そう言ってキラも微笑む。
『キラ』
 だが、イザークの声がすぐに緊張を孕んだ。
『何があっても、俺を信じてくれるか?』
 それでも、冷静な口調で彼は言葉を綴る。
「僕は、いつでもイザークさんを信じているよ」
 彼は決して、嘘は言わない。だから、信じて欲しいというのであれば信じたいと思う。
『すまない』
 彼はすぐにこう言ってくる。
『だが、必ず俺がお前を守ってみせる』
 力強いその言葉は、兄たちのそれと同じように聞こえた。
「ありがとう、イザークさん」
 そう言って、キラは微笑む。
「イザークさんが傍にいてくれるから、僕は大丈夫だよ」
 そう続ける。
『わかっている』
 任せておけ。そう言う彼の言葉だけがキラの心に残った。

 キラとイザークの機体の位置を確認して、カナードは眉をしかめる。
「まずい、な」
 位置が低すぎる。あれでは単機では重力圏から脱出できないのではないか。もっとも、イザーク一人ならば心配はしない。ストライクと同じシステムを持っているなら、単独で大気圏に突入することが出来るはずだ。
 しかし、救命ポッドを抱えていてはどうだろうか。
「フォローに行くべきなのだろうが」
 何故、こいつアスランが自分の行く手を遮ってくれるのだろう。
「何故、邪魔をする!」
 キラがどうなってもいいというのか、と思わず口にしてしまった。それとも、彼は先ほどの指示を耳にしていないのか。
 あり得ないな、とすぐにその考えを否定する。
「いっそ、ここで叩きつぶしておくか?」
 戦場であれば何があってもおかしくはない。まして、現状では自分たちは敵対しているのだ。
「……と言っても、そのせいで兄さんに迷惑がかかるのは不本意だな」
 ならば、動けないようにしてあちらに引き取ってもらうのがいいだろう。
「お前は必要ないんだよ」
 自分たちにとって、とカナードは呟く。むしろ、害悪だと言っていい。だから、早々に視界の中から排除するのは当然のことだ。
「いい加減、嫌われているという事実を認識しろ!」
 そして、二度と自分たちに関わるな。
 この呟きと共にアグニの照準をイージスの推進装置へと合わせる。そして、ためらうことなく引き金を引いた。

BACK | NEXT | TOP


最遊釈厄伝