星々の輝きを君に

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「ガモフが!」
 目の前で自分たちが今まで過ごしてきた艦が四散していく。
「ゼルマン艦長……」
 それでも、最後まで彼らは味方のポットが安全な場所へと避難できるように応戦を続けていた。その中には、キラが乗り込んだものもあるのではないか。
 イザークが心の中でそう呟いたときだ。
『出撃中のMSに告げる! ガモフの民間人が乗り込んだポットがこのままでは地球に落ちる。可能なら回収してこい!』
 焦ったような指示が耳に届いた。
「キラ?」
 ガモフに乗り込んでいた民間人は彼女しかいない。
 つまり、ガモフは少しでも彼女を安全な場所に避難させようとしたと言うことだ。それは当然のことだろう。
 しかし、である。
「ポットでは大気圏を抜けられない……」
 このままでは、彼女の命が危険にさらされる。
「どこにいる?」
 反射的にイザークは彼女の乗り込んでいるであろうポッドの信号を探した。それはすぐに見つかる。
「近いな」
 今ならば、まだ、あれを確保して安全な場所に移動することは可能だろう。
 問題があるとすれば、ここからの距離だ。邪魔が入れば時間的余裕が全くなくなる。
「だからといって、見捨てられるか!」
 守ると約束したのだ。そのためならば、どのようなことでもしてみせる。
 その思いと共にイザークはデュエルの向きを変えた。

 同じ通信をアスランも耳にしていた。
「……キラ、なのか?」
 どこにいる、と周囲を探す。しかし、すぐには見つけられない。
「あれは……」
 代わりに移動中のストライクを発見した。
「あれにはあの人が乗っているはず」
 そう言えば、先ほどの指示はオープン回線で出されていた。つまり、カナードもそれを聞いていたと言うことか。そして、彼であれば、キラがこの場にいることを知っていたとしてもおかしくはない。
 普通なら『あり得ない』ということでも、キラが関わっているのであれば、彼は絶対にする。
 過去の経験から、アスランはその事実を知っていた。
「つまり、あの人は今、キラの所に向かっていると言うことだよな」
 付いていけば彼女を見つけられると言うことだ。
「ラクスを納得させることは出来なかったが……」
 ならば、別の方法を探せばいい。
「キセイジジツを作ってしまえばいいんだよな」
 子どもが出来てしまえば誰であろうと反対は出来ないはず。そのためには、彼女の身柄を自分の側に置いておかなければいけない。
「いくらあの人だって……」
 戦場では完璧にキラをフォローしきれないはず。だから、自分に分があるのではないか。
 アスランはそう考えていた。

「まったく、あいつは……」
 イザークの動きをディアッカもしっかりと確認していた。
「キラのことを第一に考えるのはいいが、後ろがお留守じゃねぇか」
 言葉とともに背後から彼に襲いかかろうとしていたミストラルを撃ち落とす。
『ディアッカ?』
 その事実に気が付いたのだろう。イザークが声をかけてくる。
「いいから、いいから。お前らのフォローは俺の役目だろう?」
 だから、さっさとキラを確保してくれ……と続けた。自分が今いる位置では間に合わない可能性があるから、とも。
『お前に言われなくてもわかっている』
 彼らしい言葉がすぐに戻ってくる。それに、思わず笑みが浮かんでしまった。
「はいはい。俺が悪かったよ」
 だから、キラを……と続ける。
 そんな彼らの間にまた地球軍のミストラルが割り込んできた。
「邪魔だってぇの!」
 ためらうことなく相手を撃ち落とす。
「キラが死んだら、最悪、世界が滅びるぞ!」
 カナードならやりかねない。だから、と思いながらディアッカはイザークの行く手を遮ろうとしている連中へと攻撃をくわえていった。

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最遊釈厄伝