星々の輝きを君に

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 いつしか、二人以上揃って――ディアッカだけは一人でも――休憩が取れるときにはキラの部屋に集まるのが当然になっていた。
 今日もディアッカと共に彼女の部屋でお茶を飲んでいたときだ。
「……ディ……」
 パソコンをいじっていた彼女が困ったようにディアッカの名を呼ぶ。仕方がないとわかっていても、やはり面白くない。同時に、いつか自分の名前を先に呼んでもらえるように努力しないといけないか、と心の中で付け加える。
「何だ?」
 そんな自分の気持ちに気付いているのか、いないのか。彼はいつもの口調で彼女に言葉を返している。
「兄さんからメール」
 なんか、あまりよくない情報みたい……とキラは付け加えた。
「……どういう内容だ?」
 それは聞き過ごせない。そう思ってイザークも彼女たちへ近づいていく。
「第八艦隊とアークエンジェルが合流するって」
 この言葉に、イザークとディアッカは頬をひきつらせる。
「でも、ラクスさんはその前にラウ兄さん達と合流したみたい」
 だから、心配いらないと思うよ、とキラは微笑んだ。
「……いつの間に」
「ムウ兄さんと相談して、そう言うことにしたみたい」
 でないと、利用されるとわかっているから……と彼女は微かに眉根を寄せる。
 ひょっとして、何か経験があるのだろうか。
 オーブにも地球軍に近しい者がいる以上可能性は否定できないな、と思う。
 しかし、本人が口にしない以上、問いかけることはマナー違反なのではないか。そう考えるからあえて問いかけない。
「まぁ、ラクス嬢の立場を考えれば十分にあり得ることだな」
 クライン議長の令嬢と言うだけでも利用価値がありありで、その上、プラントの精神的な支柱でもあるし……とディアッカはため息をつく。
「でも、それならカガリも同じじゃね?」
「うん。でも、カナード兄さんだけじゃなく、ムウ兄さんも一緒にいるよ?」
 あの二人が揃っていてカガリに何かできるはずがない。今のところ、アークエンジェルには彼女の正体を知っているものはいないし、いたとしてもムウが何とかするだろう。キラはそう言う。
「そうだな。あの人が一緒なら大丈夫か」
 でも、さっさとあの人にもオーブに戻って貰わないと、安心できない。ディアッカはそう言ってため息をつく。
「戦場で出逢うのはごめんだしな」
 流石に、と彼は続けた。
「そのあたりは……兄さん達が何とかしてくれると思うけど……自信ない」
 頑張って、とキラは苦笑混じりに告げる。
「まぁ、それしかないって事はわかっているけどな」
 彼がまた深いため息をついた。
「それ以前に、お前の安全も確保したいところだがな」
 いっそ、プラントに避難させられればいいのだろうが、とイザークは顔をしかめる。なのに、何故、ラウはそれについて言及しないのだろうか。
「お前の正体がばれるとまずいなら、母上に保護をお願いしてもいいのだろうが」
「ダメ。それは家の親が絶対反対する」
 即座にディアッカが口を挟んでくる。
「いざとなれば、兄さんの知り合いの所に転がり込めるけど……カナード兄さん以外の二人が絶対反対するよ?」
 それはそれで厄介だ、とキラは言う。
「まぁ、それはなぁ……諦めてくれればいいのに」
 そうすれば、家の親は泣きそうなくらい喜んだだろうな……ディアッカは呟く。
「ディ。兄さんとカガリに殺されるよ?」
「わかっているから、あの二人の前では言わないって」
 カガリ一人ならばともかく、ムウが一緒ではな……と苦笑を浮かべる。
「その時はアスランでも人身御供に突き出すさ」
 少なくとも、それで二人は満足するだろう。彼はそう付け加えた。
「……二人だけですむのか?」
 アスランに関しては、とイザークは思わず問いかけてしまう。
「多分」
「残りの二人が手を出すと、あいつの命が保証されないからな」
 それはそれで怖いような気がするな。イザークは素直に告げる。
「ともかく、これと同じ情報は隊長には?」
「行っていると思うけど」
 でも、間に合っているかどうかはわからない。キラはそう言った。途中の経由地の関係で、と続ける。
「そうか」
 ならばこちらでも対策を考えておかなければいけないか。
「とりあえず、デュエルの改修は終わっているんだろう? 後は、さらに使いこなせるようにしておくしかねぇんじゃねぇ」
 自分もだが、とディアッカは言う。
「そうだな。それしかないか」
 自分が生き残るだけではない。キラを守るためにも、だ。
「大丈夫。ちゃんと俺たちがお前を守ってやる」
 この言葉に、キラは淡い笑みと共に「でも、無理しないで」と言い返される。それで逆にやる気がでる自分に、イザークは自嘲の笑みを禁じ得なかった。

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最遊釈厄伝