星々の輝きを君に
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怒りを抑えきれないというようにカガリは枕に拳をたたき込んでいる。
「そこまでにしておけ」
そんな彼女に向かってカナードは綺麗な笑みを向けた。それを見た彼女が凍り付いている。それは、彼がどのようなときにその笑みを浮かべるのか。彼女も知っているからだろう。
「とりあえず、あの人に任せておいたからな」
きっと、えぐいお仕置きをしてくれるだろう。それに自分たちも混ぜて貰えばいい。そう続ける。
「……それはそうなんだけど……」
なんか違う、とカガリは言う。
「お前が言いたいことはわかっている。だから、もう少し待て」
今、そのあたりのことは相談中だ。カナードは唇の動きだけでそう告げる。
「兄さん?」
「何の対策も取らずに放り出すわけにはいかないだろう」
不本意だが、と彼は続けた。
つまり、彼は既に動き出していると言うことだろうか。そして、何かを待っている。それはきっと、ラウからの返答ではないか……とカガリは推測した。
「……そうだけど」
とりあえず、状況を認識した……と言外に告げる。
「でも、バカがなりふり構ってないぞ」
それでも、と告げた。
「それこそ、あちらに何とかして貰わないとな」
しかし、バカか……と彼は顔をしかめる。
「何度同じ事を繰り返せばいいのか」
「だから、怒りがわくんだって」
ラクスはそれなりに受け流している。それでも万全ではない。何よりも彼女の言動はキラに似ているような気がするのだ。
彼女がそんなことをされたらと考えるだけで怒りがわき上がってくるのだ、と言う。
「……まぁ、その気持ちはよくわかるが」
あの子はここにいない。安全な場所にいるから安心しろ、と彼は言い返してきた。
「ともかく、だ。お前が下手に動けば逆に厄介なことになる。それだけは覚えておけ」
だから、大人しくしていろ。そう言われる理由は十分に身にしみている。彼だけでは吐く、他の者達にも言われているのだ。
それでも、面白くないと思ってしまうのはどうしてなのか。
「そんな表情をするな。お前の出番はちゃんと考えてある」
にやりと笑いながら、彼はそう言った。
しかし、だ。
「こういうことだと聞いてないぞ!」
指示されたことを行ってから、カガリはこう呟く。
それでも、確かにこのタイミングでは自分以外に出来なかっただろう。後は、と思いながら立ち上がる。
「大変だ!」
そのまま通路へと飛びだした。
「あいつが乗った救命ポットが射出された!」
こう言いながら、カナード達がいるデッキへと向かう。
「……カガリ?」
そうすれば、すぐにカナードが視線を向けてくる。しかし、彼の演技力はたいしたものだ、と思う。
「あいつって、誰だ?」
いつもの口調で彼は聞き返してきた。何が起きているのか、知っているなどとその口調からはわからないだろう。
「ラクスだよ! 目が届かないから、兄さんが傍にいないときにはポッドに入れって、言われていただろう!」
そのポットが射出されてしまったのだ、とカガリは一息に告げる。
「嘘だろう?」
こう言ってきたのはマードックだ。
「本当だって! 何なら、調べてみればいい」
「確かに、嬢ちゃんの言うとおりだな」
マードックもこう言って頷く。そして、ストライクから離れるとデッキの隅にある端末へと移動していった。
連絡を入れたのはおそらくブリッジだろう。彼の怒鳴り声が周囲に響き出す。
自分の耳を塞ぎながら、カガリはラクスが無事にラウ達に拾われていればいい。本音を言えば、もう一人も突っ込んでやりたかったのだが、まだ動かせる状態にない以上仕方がないか。それだけが残念かもしれない。でも、あれはオーブの人間と言うことになっているからいいか……とカガリは心の中で呟いていた