星々の輝きを君に

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 戦艦の中に明確な《夜》はない。それでも、人は寝なければいけない生き物だ。コーディネイターでもそれは変わらない。
 だから、キラも与えられた部屋でベッドの中に潜り込んでいた。
「キラ!」
 その眠りを妨げるかのようにディアッカが飛び込んでくる。
「……ディ? 何?」
 眠いのに、と思いながらキラは体を起こす。
「悪い。ちょっと付き合ってくれ」
 厄介ごとだ、と彼は顔をしかめた。
「……わかった……とりあえず、服、着替えていい?」
 流石にディアッカ達が持ってきてくれたTシャツ一つでベッドに潜り込んでいたのだ。流石に、人前にでる恰好ではない。
「あ、悪い」
 そうだよな、と呟くと、彼は慌てて体の向きを変える。
「外にいるから、終わったら声をかけろ」
 そのまま、どこかぎくしゃくした動きで外に出て行った。
「やっぱり、免疫ないんだ、ディ」
 これが兄たちならば、礼儀と称して後ろを向いているが、部屋から出て行くことはない。それどころか、ムウならば後ろを向こうともないような気がする。その場合、ラウかカナードにそれなりの報復を受けているが、本人が気にしていない以上、意味はないのではないか。そんなことも考えてしまう。
「兄さん達に、会いたいな」
 小さな声でこう呟く。
「ラウ兄さんだけでも、傍にいてくれればいいのに」
 彼の立場上、おおっぴらに甘えることは出来ないかもしれない。それでも、少しぐらいなら付き合ってくれるのではないか。
「ディ達も気を遣ってくれるけど……やっぱり、なんか違うんだよね」
 無条件で甘えていい相手ではないからだろう、きっと。そう思いながらキラは手早く着換えを終わらせる。
「でも、今はディで妥協しておくしかないかな」
 彼なら他のメンバーよりも無理を言っても許されるだろう。
「うん、そうしよう」
 こう考えたことで少しだけだが気持ちが浮上した。そして、そのまま行動に出る。
「お待たせ」
 通路に出れば、ディアッカが壁に背中を付けて腕組みをしているのが見えた。その彼に真っ直ぐに飛びつくと、首に手を回す。
「キラ?」
「眠いんだもん」
 何をするのか。そう言い返してくる彼にむかってこんな言葉を投げかける。
「……まぁ、起こしたのは俺だし……そう言う訓練を受けてないからな、お前は」
 それは仕方がないが、とディアッカはため息をつく。
「この状況で、俺が他のメンバーに恨まれてもいいのか?」
 彼はこう聞き返してくる。
「他の人にこんなことをすると、兄さん達がどんな行動に出るか、わかんないんだもん」
 ディアッカならそこまでされないだろうけど、と彼女は続けた。
「……それは否定できないな」
 確かに、と頷く彼が思い浮かべたのは二番目と三番目のどちらだろうか。
「まぁ、甘えんぼのお前に無理を強いているのはわかっているから……当面は俺で妥協しておけ」
 言葉とともに、彼は床を蹴る。
「うん」
 そう言って、キラはさらに腕に力をこめた。もちろん、ディアッカが苦しくないように注意をしてだ。このあたりの加減はカナード達相手で十分に身に付いている。
「で、何があったの?」
 とりあえず、教えられることだけでも教えて欲しい。キラは言外にそう告げた。
「……何か、ウィルスが送り付けられたらしいんだけどな。ニコルでは解析不能だそうだ」
 本当にウィルスなのか。それも自信がない……と彼は続ける。
「どこからかなぁ」
 なんか、それだけである可能性が浮かんでくるんだけど……とキラは苦笑を浮かべた。
「俺も、だ」
 あちらからの連絡だろうか、とディアッカは呟く。
「とりあえず、落ちないようにしろよ?」
「うん」
 彼の言葉に、キラは小さく頷いて見せた。

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最遊釈厄伝