星々の輝きを君に
36
自分がしないと、誰も彼女に食事を運ばないから。
この理由で、カガリはラクスのもとへと頻繁に足を運んでいた。もちろん、極力バジルールと顔を合わせずに彼女のシフトを事前に確認してから、だ。
「ラクス、食事だ」
端末から呼びかければ、すぐにドアが開かれる。
「ありがとうございます、カガリさん」
そう言いながら、ラクスが顔を出した。
「入るぞ」
言葉とともに彼女は室内へ足を踏み入れる。
「オマエモナ〜」
途端にピンクのロボット――ハロが歓迎をしてくれた。
「いつも申し訳ありません。わたくしが自分で取りに行くと申し上げているのですが」
「気にするな。私が好きでやっていることだし……お前はあまり出歩かない方がいい」
カナードやムウ――それでなければ整備陣だろうか――が傍にいればかばってくれるだろう。しかし、彼らだっていつでも自分たちに付き合っていられるわけではない。
だから、ラクスには申し訳ないが、大人しくして貰った方が色々と都合がいいのだ。
「お前に何かあれば、悲しむ連中がいるだろう? 私のいとこは絶対にショックを受けるぞ」
コーディネイターだからプラントにいるが、とさりげなく付け加える。
「まぁ、そうなのですか?」
「あぁ。第二世代も第一世代もいるぞ」
第二世代の兄弟は可愛くないが、第一世代のいとこは世界一可愛い……とカガリは笑う。
「ちなみに、可愛い方のいとこはカナード兄さんの妹だ」
さらに付け加える。
「お会いしてみたいですわ」
微笑みながら、ラクスはそう言う。それ以上のことを問いかけてこないのは、カナードが事前に『訳あり』だと告げたからだろう。
「私としては隠しておきたいんだが……あいつを狙っている害虫もいることだし」
プラントとオーブに一匹ずつ、と付け加える。
「あら、それは面白そうなお話ですわね」
是非とも詳しくお聞かせ頂きたいです、と彼女は微笑む。
「食事の後でな」
どうせなら、少しでもうまい食事を食べたい……とカガリは言い返す。
「そうですわね」
確かに、食事時にすべき話ではないか……とラクスも頷く。
「でしたら、いとこさん方のお話を聞かせてくださいませ」
どのような方々ですの? と彼女は続ける。
「プラントにいる奴は知っているかな? 私たちが親しくしていたのは弟のディアッカの方だけど……」
「ということはタッド様がカガリさん達のおじさまに当たられますの?」
やはり知っていたか、とカガリは心の中で呟く。彼女の名字が《クライン》である以上、当然といえば当然か。
「あぁ」
そんなことを考えながら頷いてみせる。
「そう言えば、タッド様の奥様がオーブ出身だとお聞きしたことがありましたが……」
「母の姉だ」
カガリは即座にこう言い返す。
「キラの母は末の妹だな」
下の二人はナチュラルだから、と続けた。
「どうして、でしょう」
「プラントと違って、オーブでもコーディネイトには金がかかる。そう言うことだ」
カナードとキラの場合、遺伝的な問題でコーディネイトしなければいけなかった。だから、父がそれなりに援助したはずだ……と付け加える。
「うちの場合、私はナチュラルでなければいけなかったから……な」
まったく、そのせいであの二人となかなか顔を合わせられなかったのに……と続けた。
「色々と難しいですわね」
ラクスが深いため息とともに言葉を口にする。
「そうだな。まったく、オーブぐらい、二つの種族が仲良くしていてもいいじゃないか」
カガリは思わずぼやく。それにラクスもしっかりと頷いて見せた。