星々の輝きを君に
33
ガモフにもその命令は届いていた。
「また、厄介な……」
ため息とともにディアッカはそう呟いてしまう。
「そう言うな。理由が理由だけに、出航したことはせめられん」
タイミングが悪かったことは否定できないが、とイザークも頷いてみせる。
「そうですね。僕が本国にいて同じ依頼をされたら、無条件で引き受けたでしょうから」
ニコルがこう言って頷く。
「そういや、そう言う時期か」
ならば、仕方がないのだろうか。だが、いくらそのためとはいえ、護衛の艦を伴わずに戦場と等しい場所へ飛び込むものはどうなのだろうかとは思わずにいられない。
「とりあえず、痕跡だけでも見つけないといけないか」
しかし、とため息をつく。
「って言うことは、シフト次第では誰もキラの側にいられない可能性があるって事だな」
この言葉に、二人も頬をひきつらせる。
「そう言うことになりますね」
そう言えば、とニコルも表情を強ばらせた。
「仕方がないな……オロール達にも協力してもらうしかあるまい」
彼らであれば、キラをフォローしてくれるだろう。今まで頼まなかったのは、自分たちの分まで任務を肩代わりしてくれる彼らにこれ以上の負担をかけたくなかったからだ。
しかし、この状況ではきれい事ばかりも言っていられない。
どう考えても目つきの危ない連中が増えてきたのだ。
「キラもなぁ……いい加減、男は厄介なんだって理解してくれよ」
自分たちのように理性が先に立つ者達ばかりではない。それを認識して欲しい。
「といっても、あいつの傍にいて例外だったのはそれこそアスランだけだからな」
自分も含めて親しい者達はキラにとって危険ではないはずだ。そう言いながら、意味ありげな視線をイザークへと向ける。
「……何が言いたい」
予想通りと言うべきか。こんな問いかけを彼はしてきた。
「いや……いつまで理性が持つかな、と思っただけだ」
ぼそっとこう呟く。
「ディアッカ! 貴様、俺を信用していないのか?」
「じゃなくて……キラがああだからさ」
あの無邪気さはなぁ、と彼はため息をついた。
「……まぁ、キラの場合、下心がないとわかっているからな」
カナード達と同レベルで見ていられると言うことだろう。それが自分にとっていいことかどうかは別問題だが……と付け加える。
「アスランに対する言動を見ているからな」
あそこまで拒絶される位なら、現状で妥協していた方がいい……とイザークは言う。
「何よりも、カナードさんの怖さを知っているからな、俺は」
さらに付け加えられて、ディアッカも頷く。もっと恐い人が同じ隊にいる以上、キラの同意を得ない行為は慎んだ方がいい。イザークもそれはわかっているはずだ。
「そんなに怖い方なのですか?」
ニコルが問いかけてくる。
「キラが絡むと余計に、な」
ただでさえザフトでもトップクラスになれそうな技術の持ち主なのに、と付け加えたときだ。いきなり背中に重みを感じる。
「誰の話?」
声を聞かなくてもこんな行為をする人間は一人しかいない。しかし、本当に男扱いされていないな……とディアッカはため息をついた。
「カナードさんだ」
その間に、イザークがこう言い返している。
「兄さんなら、納得」
それにしても、あっさりと納得されると別の意味でいいのかと思う。
「で? 何か用か?」
部屋にいろと言ったのに出てきたのには、それなりの理由があるんだろうな……と問いかける。
「……その兄さんからメールが来たんだけど……何か、僕だと判断に困る内容なんだよね」
だから相談に、とキラは言う。
「メール?」
「うん。隊長さんの許可は貰ってあるよ?」
なくても、ラウのことだ。気にするはずがないが、とイザークは心の中で呟く。
「で?」
とりあえず、概要だけでも聞いておこう。そう思いながら首をひねって視線を向けた。
「ラクス・クラインを保護している」
しかし、それがさらなる爆弾を投下してくれるとは予想できるはずもない。
「マジかよ!」
ディアッカは思わずこう叫んでしまった。