星々の輝きを君に

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 キラがこの艦アークエンジェルに乗り込んでいなくてよかった。忌々しさをポーカーフェイスの下に隠しながらカナードは呟く。
「まったく……誰が裏切り者のコーディネイターだと?」
 自分がプラント籍の人間であればそう言われても仕方がない。だが、オーブの人間ではそうではないといえる。まして、ここにはカガリをはじめとする避難民がいるのだ。
「自分がそうだから、他人もそうだと思うな!」
 許可が出るなら、今すぐにでもぶん殴ってやりたい。それをしないのは、あくまでもムウの立場を考えてのことだ。
「まぁ、いい」
 代わりにあれこれとデーターを貰っていこう。あるいは、ストライクの改良に使えるものもあるかもしれない。
「あいつらにはわからないだろうしな」
 自分が何をやっているのか、と彼は続ける。
 今回だって、こっそりとウィルスを送り込んだのだ。それでも気付かずに保存していた。きっと、自分たちが作ったOSの一部だと誤認したのだろう。
 そうならば、かなり楽になる。
 あれをここのマザーに入れた瞬間、制御の一部をこちらで操作することが可能だ。そうなれば、オーブと連絡を取ることも出来るかもしれない。
 いや、直接本土は無理にしても、ジャンク屋か傭兵達とつなぎが取れればいい。
 彼らなら、キラが今どこにいるのかわかるかもしれない。
「とりあえず、メールだけでも確認できるようにするか」
 その位なら目立たないだろう。
「本当は、あの人と相談してからやりたいが……現状では仕方がないな」
 自分の判断でやるしかないか、と呟く。
「本当は、キラの方が得意なんだが」
 最初に教えたのは自分だったのにな、と苦笑を浮かべる。もっとも、その自分にあれこれと教えてくれたのは彼だが。
「大丈夫。俺は必ずお前のところに帰るから」
 カガリを守って、と呟く。
「あの人には、自力で何とかして貰おう」
 自分たちの中で最年長なのだから、と笑った。

 不意にキラが手を止める。そのまま視線をモニターからあげた。
「ディ」
 そして、傍にいたディアッカへと呼びかける。それが面白くないと思うのは、男として当然なのだろうか。そんなことを考えながら、イザークは二人の様子を見つめる。
「何だ?」
 そんな彼の様子にディアッカが気付いていないはずはない。それでも、気にすることなくキラの側へと移動していく。
「……何か、兄さん達がいるみたい」
 しかし、この一言で何故彼なのか。理由がわかった。
「マジ?」
 言葉とともにディアッカはモニターをのぞき込む。
「ほら」
 言葉とともに彼女の指がモニターを指さしている。それに興味をひかれてイザークもまた彼女の傍へと近づいた。
「アークエンジェルって言うと、足つきか」
 その間にもディアッカは会話を続けている。
「多分……あぁ、ムウ兄さんが乗っているんだ、これ」
 なら納得、とキラはあっさりと頷く。
「マジ?」
 また新しい名前が出てくる。
「お前のきょうだいたちはどこまで食い込んでいるんだ」
 本当に、とため息をつきたくなるのは自分だけではないはずだ。
「どこって……ムウ兄さんとラウ兄さんだけだよ。オーブ以外で軍に入っているのは」
 カナードは軍に入っていないし、自分も同様だから……とキラは首をかしげる。
「でも、カガリは軍に関係があるのかな?」
 そのままこう呟く。
「後であったら、聞いてみよう」
 だが、すぐにこう言って微笑む。
「しかし、アルテミスにいるのか」
 偶然と言っていいのか? とディアッカは呟く。
「どうだろうね」
 でも、とキラは続ける。
「兄さん達と連絡が取れると楽だよね」
 どうしよう、と二人の顔を見つめてきた。
「隊長がいればすぐに相談できるんだが」
「今は本国か。迂闊に連絡を入れるわけにもいかないだろうな」
 誰に見られるかわからない以上、とイザークも頷く。それでも、いるとわかった以上、無視するわけにもいかない。
「ばれないようなシステムは作れるのか?」
 キラ、と問いかける。
「うん」
「なら、頼む」
 用は、他のものにばれなければいい。後は事後承諾でも構わないだろう。そう判断してこういった。
「まぁ、怒られるときは一蓮托生と言うことだな」
 くくっと笑いならがディアッカも口を挟んでくる。
「キラは別だが」
 民間人だし、と彼は言う。
「え〜! 僕も一緒でいいよ」
 そう言って彼女は頬をふくらませる。それを見た瞬間、イザークは思わず笑いを漏らしてしまった。

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最遊釈厄伝