星々の輝きを君に
25
目の前にいる二人に、アスランは苛立ちを隠せない。
相手が同じような表情を作っているからなおさらだ。
「いったい、何の用事があってこちらに来られたのですか?」
口調だけは柔らかいまま、ニコルが問いかけてくる。
「何故、お前達に答えなければいけない?」
自分の勝手だろう、と思いながらアスランは言い返す。
「そういうわけにはいきません。きちんと確認するように艦長から命じられていますから」
即座にニコルがこう口にした。
「ゼルマン艦長から?」
何故、と思いながら答えを促す。
「ヴェサリウスから連絡があったそうです。貴方が許可も得ずにこちらに向かったと」
戦闘中ではないにもかかわらず、勝手な行動を取った理由は何か。それを確認しろ。そう命令された。にこやかな表情を崩すことなくしっかりと毒を吐いてくれる。
「つまり、隊長の指示だと言うことだ」
あきらめろ、とディアッカがにらみつけてきた。
「……お前の差し金か?」
そう言えば、あの時も何故か、キラは彼にすがりついていたな……と心の中で呟く。それがどうしてなのか確認しないわけにはいかない。
「何の話か、わかんねぇな」
即座にディアッカがこう言い返す。
「俺の言葉で隊長が動くわけねぇだろ?」
あの、と彼は続ける。
「そうですね」
ニコルも彼に同意だというように頷いて見せた。
「隊長が僕たちごときの言葉で判断を変えるようなことはなさりません」
きっぱりと言い切る彼からはラウへの信頼が感じられる。
自分だって、少し前はそうだった。だが、どうして彼は自分がキラと接触することを邪魔してくれるのか。その理由がわからない今はそう言えない。
「言えないなら、帰ってくださいね?」
にっこりと微笑みながらニコルは言う。
「話したところで追い返すだろうが」
ため息とともにこう告げる。
「やっぱ、キラのことか」
あきれたようにディアッカが言った。
「何故、お前が当然のようにキラを呼び捨てにする」
気に入らない、と言外に告げる。
「そりゃ、いとこだからな」
ガキの頃からの顔見知りだ、と平然と言い返された。
「いとこ?」
「この前も言ったぞ?」
あきれたようにディアッカが言い返してくる。
「俺の母親とカリダおばさんは姉妹だぞ」
だから、今のように二国間の行き来が難しくないときにはしょっちゅう顔を合わせていた、と彼は付け加えた。
「カナードさんにはさんざんしごかれたし」
もう一人と一緒に、と彼はいやそうに顔をしかめる。
「……そんなこと、俺は聞いていない」
確かに、エルスマン夫人はオーブの、しかもアスハに連なる家系の出身だと聞いていた。だが、キラもそうだとは知らない、とアスランは呟く。まして、ディアッカといとこ同士だなんて、と。
「そりゃ、カナードさんに止められていたんだろうな、キラが」
お前に話すのを、とディアッカは言う。
「カナードさんか」
一番気に入らない相手であると同時に、どうしても超えられない相手だ。そして、キラを守るという一点においては誰よりも信頼できると言っていい。
「それがなくても、あんな事をしでかしてくれた奴をキラに近づけるつもりはねぇがな、俺は」
そんなことを考えていれば、ディアッカがこう宣言してくれる。
「カナードさんだって同じ気持ちだっていっていたし……もっとも、ついこの前まであれの犯人がお前だって知らなかったがな」
知っていれば絶対にキラとアスランを逢わせたりしなかったのに、と彼は言い切った。
「それこそ、俺とキラの問題だろう?」
「そのキラがお前に『会いたくない』といっているんだ。公私混同だろうと、絶対に逢わせない」
さらに付け加えるとディアッカはアスランをにらみつけてくる。
「それこそ、お前が決める事じゃないだろうが」
「決めること差。俺はキラの従妹で、現在は保護者だからな」
きっぱりと言い切るディアッカの表情はどこか誇らしげだ。それが気に入らない。だが、それ以上にどうすれなキラと話が出来るのか。今のアスランにはそちらの方が優先事項だった。