星々の輝きを君に

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 ガモフでのキラは、ほとんどディアッカにくっついて歩いていた。もっとも、彼が仕事中は仕方がないから部屋で大人しくしているか、医務室でドクターの手伝いをしていたようだが。
 それは当然だろう。
 彼女が今、ここで一番信用しているのはディアッカなのだ。
 それは間違いなく、血縁があるからだろう。少し面白くはない、と思っても仕方がないと妥協できる範囲だ。
「本当は、隊長の方がいいんだろうが……あちらにはアスランがいるからな」
 それがなければラウの傍にいるのが一番いいのだろう。だが、そうなれば、自分は声をかけるのも難しくなるか。
 イザークがそんなことを考えていたときだ。
「……イザークさん?」
 おずおずとした様子でキラが声をかけてくる。
「どうした?」
 それだけで自分が身に纏っている空気が柔らかくなるのをイザークは自覚していた。
「ブリッジに行きたいんですけど……案内してくれませんか?」
 しかし、彼女の口から出たのは予想外のセリフだった。
「ブリッジ?」
 いったい、彼女に何の用があるのだろうか。そう思いながら聞き返す。
「なんか、兄さんから呼び出しがあったとかで……」
 そうすれば、彼女はすぐにこう言い返してきた。
「隊長が?」
 個人的な連絡ではないということか、と心の中で呟く。
「ディアッカは?」
「用事が出来たって、ニコルさんと一緒にデッキに行ったけど?」
 ディアッカ一人が呼び出されたなら、彼が何かミスをしたのだろう、と思える。しかし、ニコルも一緒となれば、何か厄介ごとが起きたとしか思えない。
 そして、それにはあの男アスランが関わっているのではないか。
「そうか」
 ならば、確かに自分が案内すべきなのだろう。第一、キラのお願いを無碍に断るという選択肢は、最初からない。
「ニコルと一緒というのが気にかかるが……仕事があるなら仕方がないな」
「……そうなの?」
 キラの言葉から、始めて自分が余計なことを言ってしまったと気付く。
「ニコルは、あんな可愛いが意見とは裏腹に裏工作が得意だからな」
 ディアッカが引っ張られていったと言うことは対直勝負の部分もあるのかもしれない。そう続ける。
「そう言えば、ディアッカもそれなりにハッキングが得意だったな」
 何か関係があるのか? と呟く。
「ハッキングなら、混ぜてくれればいいのに」
 キラの口からとんでもないセリフが出たような気がするが、自分の聞き間違いだろうか。
「キラ?」
「得意だよ、僕。地球軍のマザーならよくのぞいていたし」
 ザフトのも何回か中をのぞいたことがあるけど、ばれてないよね? とにこやかな口調で問いかけられる。
「そうなのか?」
 確認するように問いかければ、彼女はしっかりと首を縦に振ってみせる。
「でも、ここではやらないって約束したから」
 だから、今はやっていない……と彼女は微笑む。
「そうしてくれ」
 思わずため息が漏れる。
「暇なら本を貸してやるから」
 さらにこう付け加えた。
「そうします」
 こう答えてくれる彼女に、イザークは当然のように手を差し出す。そうすれば、キラは一瞬、驚いたような表情を作った。だが、すぐに彼女はそっとイザークの手に自分のそれを重ねてくる。
「行くぞ」
 その手をしっかりと握りしめると、イザークは床を蹴った。

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最遊釈厄伝