星々の輝きを君に

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 とげとげしい空気に、カガリはあきれたくなる。
「何を考えているんだ、あいつらは」
 そのまま、こう呟いた。
「そう言うなって」
 苦笑と共にムウが声をかけてくる。
「何も考えていない、って言いたいところだが……一応、あれでも考えているんだよ」
 地球連合の基準で、と彼は続けた。
「……コーディネイターは化け物? 差別していい相手?」
 馬鹿馬鹿しい、とカガリは言い捨てる。
「そんなことを考えているから、いつまで経ってもこのくだらない戦争が終わらないんだ」
 さらにこう付け加えた。
「ガキの頃からそう教え込まれているんだ。オーブの理屈で考えるんじゃないって」
 それに、とムウは苦笑を浮かべる。
「あいつはまったく気にしてないぞ」
 というよりも、完璧に無視している……と彼は続けた。
「兄さんは、そう言うことが得意だから」
 はっきり言って、自分が認めた人間以外はどうでもいいと考えているのではないか。
 もちろん、自分は認められた側にいることをカガリは知っている。もちろん、ムウもだ。
 その中でも特別なのは《キラ》だろう。
 彼は一番傍で彼女を守っていたのだ。そう考えたとしてもおかしくはない。第一、自分だってそう思うのだ。
「それに、キラがここにいなくてよかったと思いますよ」
 彼女がここにいれば、あれらの言葉で傷ついただろう。そうなったら、カナードがどんな行動を起こすか。はっきり言って考えたくない。
「そうだな」
 キラがいれば、彼はここで大人しくしていてくれなかっただろう……とムウも頷く。
「ともかく、そろそろ止めてこないとまずいな」
 どちらを、といわれなくても想像が付いてしまう。
「大丈夫なのか?」
「まぁ、これでも地球軍の大尉だからな」
 その位の影響力は持っているって、と彼は笑った。
「そのための階級だしな」
 こう言うと、彼はゆっくりと移動を開始しする。
「お前はあの坊主の様子を見に行ってやれ」
 ふっと思い出したようにこう声をかけてくる。それが自分たちが拾ってきたザフトのパイロットのことだと言うことはすぐにわかった。
「はいはい」
 苦笑と共にそう言い返す。そして、カガリもデッキを離れる。
 きっと、この後に続く光景を見せたくないんだろうな。そう心の中で呟いていた。
 そのまま、彼女は真っ直ぐに医務室代わりに使われていた部屋へと向かう。
「入るぞ」
 一応、声をかけてからドアのロックを外す。そして、足を踏み入れた。
 次の瞬間、ベッドの上で手が小さく動くのが見える。
「起きていたか」
 こう言いながら、彼の元へと歩み寄った。居住区だけでも重力があるのはありがたい。
「……まぁ、ね」
 小さなため息とともに彼はそう言い返してくる。
「しかし、よかったのか?」
 さらにこう問いかけてきた。
「別に。私たちは地球軍じゃないかならな。コーディネイターだろうと何だろうと、怪我人を助けるのは当然だ」
 あえて、彼が何者であったのかは言わない。
「まぁ、ここに来たのはアクシデントがあったからだが……」
 もし、あのままヘリオポリスが存在していたならば、全てはもっと楽に進んでいただろうか。
「どちらにしろ、当分付き合ってもらう必要があるんだ。さっさと体を治せ」
 そうなったら、カナードにこき使われるのだろうが。
 でも、コーディネイターだし、男だし、多少こき使っても大丈夫だろう。
「……何か、うちの隊長より人使い荒そう」
「あきらめろ」
 ぼそっと呟く彼に、最後通牒を突きつけるようにカガリは言葉を口にした。

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最遊釈厄伝