星々の輝きを君に

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「さて」
 三人を備え付けられたソファーへと促しながら、彼は口を開く。その瞬間、キラは意味ありげな表情を作った。その表情のまま、彼女の視線がディアッカと彼の間を往復している。
「……キラ……」
 まさかと思うけど、とディアッカが頬をひきつらせた。
 いったい、それはどうしてなのか。イザークが問いかけようとしたときだ。
「とりあえず、カナードは無事だそうだよ」
 いきなり彼の口から彼が知っているはずのない名前が飛びだした。
「ビンゴかよ」
 ため息とともにディアッカが呟く。
「ディアッカ?」
 どういうことだ? とイザークは真顔で問いかける。
「ラウ兄さん?」
 それに被さるようにキラが問いかけの言葉を口にした。
「そうだよ、キラ」
 今までに聞いたことがないような言葉が彼の口から飛び出す。
「まさかとは思ってたんだよな、アカデミー時代から」
 同時に、ディアッカが深いため息をつく。
「親父に聞いてもはぐらかされたし……内密なんだろうなと思って調べなかったけど……調べときゃよかった」
 心臓に悪い、とまで彼は付け加える。
「ディアッカ?」
 どういう関係だ、とイザークは彼に問いかけた。
「前に言っただろう? キラの兄貴代わりが後二人いるって。そのうちの一人」
 下の方、とディアッカは深いため息とともに付け加える。
「本当に?」
 あまりのことにすぐには信じられないのか――それとも、顔を半分覆っている仮面のせいか――キラはさらにこう問いかけていた。
「おや? キラは私を信用してくれないのかな?」
 心外だ、と彼は言い返している。
「だって……顔が確認できないもん」
 即座にキラはこういった。
「キラ!」
 それはまずいって、とディアッカが慌てて彼女を止める。
「何で?」
「隊長の素顔はトップシークレットなんだって」
 だから、と彼は言い返した。
「……ディも兄さんの顔は知っているでしょ?」
 なのに、トップシークレット? とキラは首をかしげる。
「そうなんだけど、さ」
 おそらく、クルーゼ隊に配属されてすぐにミゲルから聞かされたあれこれがディアッカの中では引っかかっているのだろう。話半分にしても、確かにあれを聞かされては焦る気持ちもわかる。
「ここにはイザークも居るんだし」
 自分たちはともかく、と付け加えられたのは気に入らない。
「ディアッカ! 貴様は俺が秘密を守れない男だと言いたいのか?」
 反射的に彼を怒鳴りつけていた。
「そうは言うけど、俺の秘密じゃねぇし」
 ラウが隠している以上、自分たちが追究することはできないだろう……と彼は言い返してくる。
「それはそうかもしれないが」
 しかし、といいかけたときだ。ラウが小さな笑いを漏らす。
「なるほど。カナードが気に入るわけだ」
 くつくつと笑いながら、彼はそう言った。そのまま、さりげない仕草で仮面を外す。
「隊長!」
 まさか外すとは思わなかった。そう思いながら、こう口にしてしまう。
「キラを安心させるのが最優先だからね」
 それに、とラウは続ける。
「ここで私の素顔について周囲に話すような馬鹿ではないだろう、彼は」
 そんなことになれば、キラから引き離す……と彼は言い切った。
「ラウ兄さん、それは……」
 キラは不安そうに彼に呼びかける。
「彼はそんなことをしないよ。伊達や酔狂で、今まで彼らのことを見ていたわけではないからね」
 柔らかな笑みと共にラウは言葉を口にした。
「問題はアスランとあちらに合流したカナード達だが……」
 さて、とそのまま考え込むような表情を作る。
「そうだね。君には不自由をかけてしまうかもしれないが、当面、ガモフにいて貰おう。あちらであれば、アスランが迂闊に足を運べないし、運んでもすぐにわかるだろうからね」
 後者については放っておいても大丈夫だろうが、とさりげなく付け加える。
「大丈夫。ちゃんとオーブに帰してあげるよ」
 任せておきなさい。そう言う彼にキラは小さく頷いて見せた。

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最遊釈厄伝