星々の輝きを君に

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「隊長?」
 ミゲルが慌てたように彼に呼びかけている。
「丁度いい。彼を連れて行くように」
 ニコルもミゲルを手伝え……と彼は口にした。
「隊長!」
 何を、とアスランは言い返す。
「どう見ても、彼女にとって君の存在はマイナスなようだ。これでは、ゆっくりと話をすることも出来ないからね」
 それに、と彼は続ける。
「君には確か婚約者がいた、と記憶しているが?」
「それとこれとは関係ありません!」
 即座にアスランが言い返す。
 いや、関係があるだろう……とディアッカが呟いたのがわかった。しかし、それに関してはあえて何も言わない。それよりも、キラの方が気にかかっていた、といった方が正しいのか。
「何よりも」
 アスランの腕をさらにねじり上げながら彼は言葉を重ねる。
「女性が嫌がっている以上、その原因を排除するのは男として当然の事ではないかな?」
 嫌がられているというのに相手に無理を強いるというのは見苦しい行為ではないか。きっぱりとした口調で続けた。
「自分は!」
 だが、アスランは反論をしようとする。その姿が見苦しいと言われているのを認められないのだろうか。
「今回に限っては、完全にお前が悪者だな」
 いつの間にかアスランの脇に移動していたミゲルが、あきれたように声をかける。
「そうですね。『嫌い』とまで言われているのに、強引に物事を進めようとするのは最低です」
 さらに、普段はアスランの味方をすることが多いニコルまでもが彼に向かってこんなセリフを投げつけた。
「俺は!」
「……だから、彼女がお前に近づいて欲しくないって言っているだろ? この場合、優先すべきなのは女性のセリフだよな」
 というわけで、と言いながら、ミゲルはアスランの体を受け取る。
「今は、お前は隔離、と」
「そうですね」
 反対側からアスランの腕をがっちりとホールドしながらニコルも頷いて見せた。
「必要だと思うことは後で教えてくださいね?」
 そのまま、視線だけをイザーク達に向けてこういう。
「わかっている」
 だから、さっさとそれを連れて行け……とイザークは言外に付け加えた。これ以上、おびえるキラの姿を見ているのが辛くなってきたのだ。
「じゃ、行こうか、アスラン?」
 仕事は山ほどあるぞ……と何故か楽しげにミゲルが言った。ひょっとして、自分の仕事を押しつける気なのだろうか。アスランを引きずるように移動を開始した彼を見ながら、そんなことを考えてしまう。
「キラ! 俺はあきらめないからな」
 二人がかりでは抵抗しても無駄だ、と判断したのか。素直に連行されながらも、アスランはこう叫ぶ。その瞬間、キラがどのような表情を作ったのか。彼の目には入らなかったのだろうか。
「あいつは」
 アカデミー時代からウマが合わないとは思っていた。
 しかし、今ほど彼を気に入らないと思ったことはなかったかもしれない。
「イザーク、落ちつけって」
 これ以上、キラを恐がらせるな……とディアッカが声をかけてくる。
「そうだな。すまない、キラ」
 慌てて謝罪の言葉を口にすれば、彼女は小さく首を横に振って見せた。
「……アスランがここにいるなんて、思わなかった……」
 そして、蚊の鳴くような声でこう告げる。
「俺としては、お前とあいつが顔見知りだったことに驚きだが……」
 ディアッカは知っていたのだろうか。心の中でそう呟きながら彼の顔を見つめる。しかし、その表情からは判断できない。
「とりあえず、中に入りなさい。話はそれからでもいいだろう」
 アスランが戻ってくる可能性も否定できない、とつげながら、彼は己の執務室へと入っていく。
「そうですね」
 確かに、ここにいてはアスランでなくとも他の誰かに話を聞かれるかもしれない。それでは込み入ったことは話せなくなる。だから、と頷くとイザークは二人へと視線を向けた。 「元々、話をするために来たんだからな」
 それに、ディアッカはこう言い返してくる。そして、キラを促すと移動し始めた。もちろん、イザークもだ。
 三人の背後でドアが閉まる。同時に、ロックされたのは万が一を考えてのことだろう。本当に厄介な奴だ、とイザークは心の中で毒づいていた。

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最遊釈厄伝