星々の輝きを君に
20
「キラ! どうしてお前がここに」
彼女の表情に気付かないのか。アスランはこう言うと近づいてくる。しかし、逆にキラは、彼から隠れようとするかのように、ディアッカの背中にすがりついた。
「キラ?」
彼女のその好意が不本意だったのか。アスランは一瞬不本意だという表情を作る。
「俺だよ? 忘れたのか?」
だが、すぐに笑みを作るとこう呼びかけた。
ひょっとして、知り合いなのか? そうは思うが、それにしてはキラの態度が理解できない。彼の声すら恐怖を感じるという表情で完全にディアッカの陰に隠れているのだ。
「キラ?」
どうしたんだ? とイザークは問いかける。
しかし、彼女は言葉を返してこない。いや、返せないと言った方が正しいのか。
「キラ!」
さらに、アスランが邪魔をしてくれる。
「近寄るな! キラが恐がっているだろうが」
歩み寄ろうとした彼をディアッカが怒鳴りつけた。
「邪魔をするな!」
負けじとアスランはこう言い返す。
「俺とキラは幼なじみだ!」
しかし、このセリフは予想外だった。
だが、これでキラが何故、彼を恐がっているのか想像が付く。おそらく、幼い頃に何かをされたのだろう。
「それが?」
あるいは、ディアッカは何かを知っているのかもしれない。蔑んだような表情でアスランに言葉を返している。
「なら、俺とキラはいとこ同士だ」
キラを守る義務がある、と彼は続けた。
「……いとこ?」
誰と誰が、とアスランは呟く。
「何だ? 知らなかったのか?」
ということは、ディアッカは冷笑を唇に浮かべる。
「お前はよっぽどカナードさんに信用されていなかったんだな」
確かに、カナードはあまり口数が多くはない。しかし、必要があれば彼はきちんと話をする人間だ。
そんな彼がアスランにディアッカ――エルスマン家のことを話さなかった。
つまり、アスランは自分たちの家族のことを話す必要がない、と彼に判断されたと言うことだろう。
「うるさい!」
図星だったのか。アスランはそう怒鳴る。その瞬間、キラの細い体が大きく跳ね上がった。
「俺はキラと話がしたいんだ!」
邪魔をするな。そういうと同時に、アスランは強引にキラへと手を伸ばそうとする。
「いやっ!」
だが、それをキラの叫びが阻む。
信じられない、というようにアスランは目を見開く。
「キラ……俺だよ?」
だが、すぐに言葉とともに行動を再開しようとする。
「やだ! 触らないで!!」
しかし、キラはこう言いながら少しでもアスランから遠ざかろうと体の位置を変えた。
「キラ……冗談はそこまでにしておいてくれないか?」
そんな彼女の言動を見ても、アスランは自分が『嫌われていない』と思っているのだろうか。こんなたわごとを口にしてくれた。
「冗談なんかじゃない! アスランなんか、嫌い……近づかないで」
このままでは彼から逃れられないと思ったのか。キラはきっぱりと拒絶の言葉を口にする。
「キラ……何をすねているのかわからないけど、本気で怒るぞ?」
だが、それすらもアスランには『すねている』としか思えないらしい。
本当に、どこをどうすればここまで目が曇るのか。本気であきれたくなる。しかし、それ以上に、キラにここまで拒絶されているのはどうしてなのか。
「本気で怒られるのはお前の方だろうが」
ともかく、すこしでも早くキラからアスランを引き離さなければいけない。
そうでなければ、キラの精神がバランスを崩すような気がする。
何よりも嫌がっているキラに無理強いをするようなアスランが許せない。
そんな気持ちのまま、イザークは彼らの間に割っては言った。
「女性が嫌がることをするのは、男として最低じゃないのか?」
「お前には関係ない!」
しかし、アスランは耳を貸そうとはしない。それどころかイザークの体を強引に押しのけようとした。
このままでは埒が明かない。いっそ、こちらも実力行使にでるべきか。そう考えたときだ。
「ぐっ!」
妙な声と共にアスランの動きが止まる。
「隊長?」
気が付けば、いつの間にかアスランの背後に彼がいた。それだけではない。後ろ手に彼の腕をねじり上げている。
「いい加減にしたまえ、アスラン・ザラ」
彼は低い声でこういった