星々の輝きを君に

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「何があった?」
 ドアを閉めると同時に、イザークはニコルに問いかける。
 そもそも、何故、ディアッカではなく彼が来るのか。それも気にかかってはいた。
「……落ち着いてくださいね」
 だが、それを問いかけるより先に彼の言葉を聞こう。そう思って続きを促す。
「ヘリオポリスが崩壊しました」
「何!」
 流石に、すぐには信じることが出来ない。
 全てのプラントは何重ものバックアップシステムで守られているはず。それなのに、崩壊することなどあるのだろうか。
「戦闘中の流れ弾がコアブロックを破壊してしまったようで……」
 確かに、プラント内で戦闘を行えばそうなる可能性があった。しかし、それが現実となればやはり辛い。
「俺たちが、あいつから家を奪った、ということか」
 あるいは、友人達の命も奪ってしまったかもしれない。家族といわないのは、カナードがその程度で死ぬはずがない、と知っているからだ。
「どこの攻撃だ?」
 せめて、それが自分たちザフトでなければいい。そう考えてすぐにそれを否定する。
 たとえ地球軍の攻撃のせいだったとしても、平和だった場所を戦場にしたのは自分たちのせいなのだ。
「……それは、流石に……」
 はっきりとしない、とニコルは言ってくる。
「わかっている。で、ディアッカは?」
「ブリッジです。少しでも情報を入手したいと」
 被害の、とイザークの問いかけに彼は答えた。
「あの戦闘でシェルターに非難している者達は多いでしょうから。あのプラントではそれが全て脱出艇になっていたようですし……」
 そこに避難している者達は大丈夫ではないか。あの後、両軍共に戦闘を中止したし、と彼は続ける。
「だからといって、謝って済むことではありませんが」
 キラには、とニコルはため息をつく。
「そうだな」
 とりあえず、とイザークは視線を扉の方へ向けた。
「あいつが戻ってくるまでは内緒にしておこう」
 不確定な情報を与えるよりも、きちんとしたデーターと共に告げた方がいい。大きな衝撃を受けるのは一度だけでいいはずだ。
「しかし、厄介なことになったな」
 色々な意味で、と彼は呟く。
「そうですね」
 ニコルも同意をするように頷いて見せた。

「まさか、こんなことになるなんて……」
 信じられない、とカガリが呟く。
「可能性としては決して低くなかったがな」
 内部での戦闘が繰り広げられていれば、とカナードは言う。
「もっとも、どうやら原因は流れ弾ではないようだが」
 さらに彼はそう付け加えた。
「兄さん?」
 それは、とカガリが即座に聞き返してくる。
「戦闘での被害なら、あそこまで綺麗にパージされない。むしろ、中央制御室で故意に操作されたと言った方が正しいだろうな」
 もっとも、あくまでも自分の私見だが……と彼は続けた。
「……だが、その可能性は否定できない、というんだろう?」
 カナードがそう言うのであれば、可能性は高いのではないか。カガリはそう言い返してくる。
「ともかく、何とか本土と連絡を取らないと」
 これの通信機では出力が足りない。それ以上に、いつバッテリーが切れるかわかったものではないし……と呟いたときだ。
「……誰から、だ?」
 通信機が着信を告げてくる。しかし、ここでいったい誰が自分たちの存在に気付いたというのだろう。発見されるようなミスはしていないはずだ。
 そう考えながら、カナードは通信機を操作する。
『そこにいるな?』
 その瞬間、耳に届いたのは、ある意味心強い相手の声だった。

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最遊釈厄伝