星々の輝きを君に

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『どうして、貴方が……』
 目の前の機体から二度と聞きたくない声が響いてくる。
「成り行きだ」
 こう言い返すしかない。もっとも、そうでなくても相手に説明する必要などないだろう、とカナードは考えていた。
 だが、相手がどうかは別だ。
『成り行き』
 信じられないというように彼は言葉を返す。
「それ以外にないな。できればこれには関わりたくなかったんだが……」
 カガリと怪我人を守るにはこれを利用するのが一番だった。それに、うまくいけば先に避難したキラとも合流できるだろう。
「どちらにしろ、お前と付き合っている暇はない」
 そんなことをしている時間があるなら、怪我人の手当てをキラの捜索をした方がマシだ。
「第一、俺はお前を許したつもりはないぞ、アスラン・ザラ」
 きっぱりと言い切ると、カナードはそのままこの場を立ち去ろうとする。
『キラは? 一緒なんですか?』
 そんな彼に向かってアスランがこう問いかけてきた。
「お前に答える必要はない」
 たとえ、知っていたとしてもな……と心の中で呟く。
「俺たちは、あの時のことを許した覚えはないからな」
 できれば、今すぐこの世から消してやりたい。だが、それでは後々面倒な事になる。
「覚えておけ。たとえどこで顔を合わせようと、キラが昔のようにお前を見ることはない」
 自分が何をしたのか、忘れたわけではないだろう? と続けると、カナードは今度こそその場を離れた。
「……兄さん……」
「後で話してやる。だから、とりあえず今は黙っていろ」
 でなければ、怒りを収めきれない……と心の中で付け加える。
 本当に、あの時、誰に邪魔されようとあいつの命にとどめを刺しておくべきだったか。心の中でそう呟く。
 だが、そうすればキラの側にいられなくなった可能性の方が高い。
 自分にとって何よりも優先しなければいけないのは彼女の安全だけだ。だから、と自分に言い聞かせる。
「ともかく、このままでは動きの取りようがない。使える施設に移動するぞ」
 怪我人の手当てとバッテリーの補充。後、出来るならオーブ本土へ連絡を取ってカガリを引き取ってもらわなければいけない。
「やらなければいけないことが山盛りだからな」
 この言葉に、カガリも小さく頷いて見せた。

 その報告は、今にも出撃しようとした時に届いた。
「そうか……ディアッカ達が、ね」
 どうするべきか、と考え込むように彼は顎に手を添える。
「オーブ籍の第一世代とはいえ、同胞だ。何よりも、女性を見捨てるのは男として最低の行為だからね。それに関しては咎めるのやはめておこう」
 何よりも、女性の存在は貴重だ……と続ける。
『了解しました』
 回線の向こうでほっとしたようなため息が聞こえたのは錯覚ではないだろう。
「とりあえず、作戦終了後、時間が取れ次第、詳しい話を聞かせてもらおう」
 それまでは、保護してきた少女はガモフで休んでいて貰うように……と彼は続ける。
「威嚇はもちろん、決して覗きに行かないよう、徹底させておいてくれたまえ」
 彼女の世話は、保護してきた者達に任せろ……と笑う。
『確かに、それがいいでしょうな』
 そのように続けておきます、と言葉を返される。
「では、出撃する」
 後の指示はタイミングを見て君が出すように。そう言い残すと発進シークエンスを開始する。
『御武運を』
 この言葉を背に、彼は愛機をそのまま虚空へと発進させた。

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最遊釈厄伝