星々の輝きを君に

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  12  



 カナードは無事だろうか。
 だが、自分が戻っても足手まといにしかならないことはわかっている。
「でも、どこに逃げれば……」
 シェルターがあるはずの施設からは煙が上がっていた。しかし、他に行くべき場所が思いつかない。
「……あそこなら、非常用のポッドもあるし……」
 それらが全部壊れたとは思えない。だから、と思ったときだ。遠くから自分を探しているらしい者達の声が聞こえてくる。
「どうして……」
 ここまで自分たちに固執するのだろうか。そう思わずにはいられない。
「兄さんなら、知っているのかもしれないけど……」
 彼らは、そう言うことは自分には教えてくれないのだ。それが彼らなりの気遣いだとわかっている。それでも、こう言うときにはもどかしい。
「ともかく、掴まったらまずいよね」
 せっかく、カナードが逃がしてくれたのだから……とキラは呟く。
 しかし、どちらに向かえばいいのだろうか。
 そう考えたときだ。
 不意に何かの影が自分の上に落ちてくる。
「何?」
 反射的に視線を向ければ、見覚えのないMSがこちらに近づいて来るのがわかった。ひょっとしたら、これは地球軍が開発していたものだろうか。そして、これらのために自分たちが拉致されたのかもしれない。ふっとそんなことを考える。
「……逃げないと……」
 どちらにしても、と思い、その場を離れようとした。しかし、行く手を塞ぐようにその機体が着地をした。
 どうしよう。
 そう考えたときだ。
「キラ!」
 ハッチが開くと同時に自分の名を呼ばれる。その声に聞き覚えがあった。
「……ディ?」
 まさか、と思いながら視線をあげる。
 そうすれば、シールド越しに記憶にある顔が確認できた。
「あぁ……ともかく、安全な場所まで連れて行くから、詳しい話はそこで……」
 口早に彼はそう言う。
「でも……」
「心配するな。ここにいる方がまずいだろう?」
 この言葉は否定できない。
 しかし、どうしてもためらいが振り切れないのは彼が今ザフトにいるという事実のせいだろうか。
 それでも、地球軍に掴まるよりはましだろう。
「俺たちがちゃんと、お前をオーブに帰してやる」
 何よりも、この言葉が彼女の気持ちが決めた。
 手を伸ばしてディアッカのそれを掴む。そうすれば彼は軽々とキラの体をハッチの上に引き上げた。
「しっかり掴まっていろよ」
 そういうと同時に、彼はハッチを閉める。
『ディアッカ? そろそろタイムリミットだぞ』
 まるでそれを待っていたかのように通信機から声が響いてきた。その声も知っているような気がする、とディアッカのひざの上でキラは首をかしげる。
「悪い。とりあえず、無事に保護したから」
 詳しいことは、こちらも戻ってからな……と彼は言い返す。
「ちょっとキラも混乱しているようだから、説明は後でな」
 さらに彼は言葉を重ねる。
『わかった。それよりも外で戦闘が始まったようだぞ』
 急げ、と声の主は言葉を返す。
「わかったって。キラ。しっかり掴まっていろよ?」
 こう言われて反射的に彼に抱きついた。やはり、カナードよりは一回り近く細いな、と意味もなく考えてしまう。
 その間にも、彼は機体を操ってヘリオポリスから虚空へと移動していく。
 自分はここに戻ってこられるのだろうか。
 キラはそんなことを考えてしまった。

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最遊釈厄伝