星々の輝きを君に
08
ここは平和だ。
しかし、その平和もいつまで続くか。それはわからない。
「大丈夫かな?」
小さな声でキラが問いかけてくる。
「大丈夫だろう。オーブは中立だ」
カナードはすぐに言葉を返す。それだけでではなく、そっと彼女の肩に腕を回すと自分の方へと引き寄せる。
「それに、あいつも頑張ってくれているからな」
だから、直接、自分たちが関わることはない。いや、そう思いたい……と彼にしては珍しく言葉を濁らせた。
「お兄ちゃん」
「まぁ、多少のことは妥協せざるを得ないだろうが……お前だけは何があっても、俺が守ってみせる」
だから、安心しろ……と笑みを作る。
「……ありがとう」
それに、キラは小さな声でこう言い返す。
「でも、お兄ちゃんも無理をしないでね?」
コーディネイターだってケガや何かをしないわけではない。無理がたたれば倒れてしまうだろう、と彼女は続けた。
「僕も、出来ることはするから」
だから、と不安そうにカナードの顔をのぞき込んでくる。
「もちろんだ。いざというときにお前を守れない、となれば兄さん達に何をされるかわからない」
はっきり言って、それはものすごくいやだ、と心の中で呟く。
身体的能力であれば自分と同レベルなのはキラだけである。なのに、ラウはもちろん、ナチュラルであるムウですら自分を簡単に殴り飛ばせるのだ。
それは間違いなく経験の差だろう。
いくら身体的な能力を向上させたとしても、経験を積まなければそれをいかすことができない。
そう考えれば、ナチュラルもコーディネイターも変わらない存在ではないか。
もっとも、と彼は心の中で呟いた。自分たちをその範疇に入れていいのかどうかはわからない。
しかし、それをキラに伝える必要はないだろう。
知らなければそれで悩むことはなくなる。そして、知らなければ何を言われてもわからないはずだ。
「……兄さん達、大丈夫かな?」
キラがそう呟いたのがわかった。
「大丈夫に決まっているだろう。あの人達に勝てる人間なんて、皆無に近いんじゃないか?」
明るい口調で言い返す。
「うん、そうだよね」
少しだけほっとしたような表情で彼女は頷いた。
「おじさんとおばさんも本土にいる。あそこならウズミ様が守ってくださるはずだ」
だから、自分たちのことを優先しよう、と囁く。
「……うん」
それにキラは頷いて見せた。
「大丈夫。いつまでもこんな状況が続くわけじゃない」
この状況に嫌気が差しているのは、自分たちだけではない。地球連合やプラントの国民だって同じなのだ。そして、ウズミ達が動いている。近いうちに何か動きがあるのではないか。カナードはそう考えていた。
「……だと、いいね」
そうしたら、またみんなに会えるだろうか……とキラは呟く。
「大丈夫だろう。兄さん達は終わったら、さっさと押しかけてくるだろうしな」
その時に、キラの顔色が悪くても、自分がお仕置きをされるのだろうな……とカナードはため息をついた。
「そんなことはない、と思うけど?」
「あるだろう。兄さん達にとって見れば、弟よりも妹の方がポジションが上らしい」
まぁ、人のことは言えないが……と心の中で付け加える。
「……ともかく、しばらく学校は休め」
さりげなくそう告げた。
「兄さん?」
「その方が、俺が安心できる」
この言葉に、キラは渋々頷いてみせる。
その時だ。不意にインターフォンが来客を告げた。
「……兄さん……」
途端に、キラの表情が不安で彩られる。
「大丈夫だ、キラ」
彼女に向かってそう告げると、カナードは立ち上がった。