星々の輝きを君に
06
地球軍のユニウスセブンへの核攻撃。
それを機に、世界は本格的な戦火に包まれていた。
「……キラ達との連絡は?」
ザフトアカデミーで再会したディアッカにイザークは思わずこう問いかけてしまう。
「残念だが……引っ越すって連絡があったのが最後だ」
それに対し、彼はこう言い返してきた。
「流石に、ここまで混乱が広がれば……向こうが出したとしても途中で行方不明になってもおかしくねぇからな」
それどころか、消去されていてもおかしくはない。もちろん、エザリアにもキラのメールアドレスは教えてあるから、何か手を打ってくれているとは思うが……とイザークは心の中で呟く。
タッドだって同じだろう。
「とりあえず、オーブは現在、戦火に包まれていない。それだけが救いか」
それだけで、キラ達への被害は減るはずだ。
「カナードさんも傍にいてくれるだけ、ましだろうし」
本当は、他の二人も傍にいてくれればもっといいが……とディアッカはため息をつく。
「他の二人?」
「カナードさんと同じで、キラのご両親が引き取っていた人たちだよ。一人はナチュラルだけど、めちゃくちゃ強い。カナードさんの体術の基本も、彼らが教えたらしい」
ただ、と彼は言葉を重ねた。
「キラより十歳ぐらい年上だから、既に家を出ているらしい」
仕事の関係で、と言われて納得をする。
「まぁ、二十代になっていれば当然か」
ナチュラルだろうと、と頷き返す。
「あぁ。まだ、カナードさんだけは傍にいてくれるようなことを言っていたが……三年近く前なんだよな」
無事でいてくれればいいが、とディアッカはまたため息をついた。
「ともかく、見掛けたら保護できるようにするしかないんだろうな」
避難民扱いであれば、ナチュラルだろうと保護できるのではないか。まして、オーブの人間であれば……と彼は自分に言い聞かせるように付け加える。
「そのためにも《紅》は手にしておくべきなんだろうな」
ザフトアカデミーで上位十人にだけ与えられるとき別な色。それを手にできれば、かなり融通が利かせられるようになるはず、とイザークも頷く。
「そうだな。本気を出すか」
今までのように手を抜かずに、と彼は言う。
「貴様」
今まで彼は手を抜いていたというのか。そう思わずにいられない。
「兄貴がああだからな。ちょっと目立たないようにしていただけだって」
しかし、彼は苦笑と共にこう言い返してくる。そう言われればそれ以上の反論は出来ない。彼の兄が頑張りすぎてパンクしてしまったことをイザークも知っているのだ。
「……お兄さんは?」
「最近はだいぶ落ち着いてきた。まぁ、座ってする仕事には元々支障がないからな」
プログラムでキラに負けないように、とまた勉強をし始めた……と彼は表情を和らげる。だから大丈夫だろう、とも。
「結局、キラのおかげなんだろうけどな」
彼女が送ってくれた見舞いのためのプログラムが、彼の肩から力を抜かせてくれたらしい。そして、それが次の目標を見いださせてくれたのだ、と彼は笑った。
「だからこそ、何としても安全な場所にいて貰いたいんだが」
オーブは当面安全だろう。しかし、それもいつまでかわからない。
「ブルーコスモスか」
「あぁ。連中さえいなければもう少し安心できるんだがな」
イザークの言葉にディアッカが頷いたときだ。ドアのところで新入生を呼ぶ声がする。
「行くか?」
ディアッカがこう問いかけてきた。
「あぁ」
当然だ、とイザークも頷く。
「急ぐぞ」
そのまま、彼は歩き出す。
「はいはい」
そう言いながら、ディアッカがまたため息をついたのがわかった。