星々の輝きを君に
05
だが、時は止まってくれない。
すぐに使節団が帰国する日が来てしまった。
「本当、このままここに残らねぇ?」
法律的な手続きはタッドがするから、とディアッカがキラ達に言っている。
「でも、そうすると父さんと母さんに会えなくなるから」
それはいやだ、とキラは言い切った。
「だよなぁ……」
あいつらも騒ぐに決まっているし、とディアッカは肩を落とす。
「残ってくれた方が安心なんだけどな」
色々な意味で、と彼は続けた。
「大丈夫だよ。お兄ちゃん達がいるから」
ね、といいながら彼女は隣に立っているカナードを見上げる。
「そうだな。当面は大丈夫だ」
そうすれば、カナードも頷いて見せた。だが、その言葉に微妙に引っかかりを覚えたのは自分だけか、とイザークは思う。しかし、それを追及する権利は今の自分にはない。
「キラ」
代わりに、と彼は少女に呼びかけた。
「何ですか?」
即座に彼女は視線を向けてくる。
「これを……俺のメールのアドレスだ」
たまには連絡をくれると嬉しい、と笑いかけた。その瞬間、ディアッカが驚いたような表情を作る。殴りたくなるが、あえてこらえた。
「……あの……」
いいのだろうか、というようにキラが首をかしげている。
「受け取っておけ」
そんな彼女を促すかのようにカナードが言う。
「何かあったとき、連絡を取れる人間は一人でも多い方がいいからな」
彼の言葉の裏に『こき使える人間』と聞こえたような気がするのは錯覚だろうか。
「……わかった」
なら、自分も教えるね……とキラは微笑む。
「ディも知っているけど」
「お前から直に教えて貰った方がいいな」
彼女の言葉を遮ってイザークはそう言う。
「イザークさん?」
「こいつからだと、後であれこれ恩を着せられかねない」
そう続ける。
「……そんなことはしねぇよ」
ぼそっとディアッカが呟く。だが、それをイザークは無視した。
「キラがいやなら、我慢するが」
代わりに、彼女にこう告げる。
「いやじゃない。今、書くから、ちょっと待ってね」
言葉とともに彼女はメモできるものを探し始めた。しかし、しっかりと荷造りをしてしまったのか。すぐには見つけられないらしい。
「ほら、キラ」
仕方がないな、と笑いながらディアッカがペンと手帳を差し出している。
「ありがとう」
ふわりと微笑むと、キラは彼の手からそれらを受け取る。そして、何も書かれていないページを見つけると、さらさらとペンを走らせ始めた。
「破っていい?」
「でないと渡せないだろう」
そんなさりげない会話ですら、親しさが伝わってくる。それもちょっと気に入らない。だが、血縁には勝てないとわかっているからと自分には言い聞かせる。
「イザークさん」
その間にも必要なことを終わらせたらしい。こう言いながら彼女はメモを差し出してくる。
「帰ったらメールしますね」
さらにこう付け加えてくれた。
「あぁ。楽しみにしている」
それにこう言い返す。
「俺も返事を書くからな」
この言葉に、彼女はさらに笑みを深めてくれた。
こうして、オーブの使節団はきこくしていった。
まさかこれが最後の交流になるとは、誰も予想してはいなかった。世界が最悪の状況へ向かっていったことも、だ。