星々の輝きを君に
04
「キラを、どう思っているか」
ディアッカのように《妹》と言えればいいのかもしない。しかし、そうではない、ということを自分自身がよくわかっていた。
「とりあえず、あいつが傍にいるのはいやではないな」
というよりも、彼女が傍にいてくれると嬉しい。そして、あの大きな葡萄色の瞳で自分を見つめてくると、何故か心拍数が上がるような気がする。
「何故、だろうな」
いったい、自分は彼女をどう思っているのか。そう呟いたときだ。
「わからないなら、これからわかるようにすればいいだけでしょう?」
小さな笑いと共にエザリアが声をかけてくる。彼女の接近に気が付かないなんて、今までなかったのに、本当に自分はどうなってしまったのか。そう思わずにいられない。
「脅かさないでください、母上」
その気持ちのまま、イザークは言葉を返す。
「気付かない貴方が悪い」
だが、エザリアはきっぱりと言い切った。
「母上」
「それよりも、です」
イザークの講義を綺麗に無視して彼女は言葉を綴る。
「貴方はキラちゃんがこのままオーブに帰ってもいいのですか?」
この問いかけに、イザークは首を横に振って見せた。
「とりあえず、カナードさんが許可を出してくれましたので、メールアドレスだけは聞いておこうかと思っています」
少なくとも、そうすれば繋がりを保つことは出来る。繋がっていられれば、自分の気持ちを見極めるまでの猶予が出来るような気がする、と思う。
「……本当に貴方は……」
小さなため息とともにエザリアは言葉を口にする。
「母上?」
自分は何か失敗をしたのだろうか。そう思いながらイザークは母の顔を見上げた。
「私は、キラちゃんのような娘が欲しいわ。この際だから、嫁でもいいわよね」
そうすれば、彼女はこんなセリフを口にしてくれる。
「母上……それは、母上や俺が勝手に決めていいものではないと思います」
キラはオーブの人間だ。だからこそ彼女自身の意志が重要なのではないか。
「わかっているわよ。でも、貴方が頑張ればいいだけのことでしょう?」
違うの? と彼女は首をかしげてみせる。
「母上。それこそ、俺の意志は無関係ですか?」
「何を言っているの? 貴方の意思を尊重しているからこう言っているのではありませんか」
だから、どうしてそうなるのか。本気で問いつめたい。しかし、口で彼女に勝てるはずがない、ということもわかっていた。
「とりあえず、そのような話は、まだ、俺たちには早いと思います」
せめて、自分だけではなくキラも幼年学校を卒業するような年齢になってからでなければ、とイザークは言い返す。その時には、多分、答えが出ているのではないか。そうも思う。
「仕方がありませんね」
ため息とともにエザリアは頷いてみせる。
「ともかく、です。きらちゃんがプラントを嫌いにならないように努力しなさい」
自分もキラの肉親をナチュラルだからと言って嫌いにならないようにする、と彼女は続けた。
「そうですね。でも、キラやカナードさんの言動を見ていれば、素晴らしい方だと推測できます」
ディアッカも、彼らのことは手放しでほめていた。イザークはそう告げる。
「そうね。タッドもそんなことを言っていたわ」
しかし、と彼女はため息をつく。
「考えてみれば、キラちゃんと貴方が結婚すれば、彼とも親戚になるのね」
それはあまり嬉しくないかもしれない。そう呟くのはどうしてなのか。
「ディアッカはともかく、タッド様は立派な方だと思いますが?」
「否定はしないわよ。ただ、考え方が違うから」
ナチュラルに対する、とエザリアは言う。
「でも、オーブに関してはもう少し考え直さないといけないわね」
彼女の言葉に、イザークは頷く。
「それがいいと思います」
キラのことを考えれば、と告げれば彼女は微苦笑を返してくる。
「ということで、頑張りなさいね」
どうやら、彼女は本気でキラのことを諦める気はないらしい。
しかし、本当に自分は彼女のことをどう思っているのだろうか。きちんと答えを出さなければいけない。イザークはそう考えていた。