星々の輝きを君に
02
栗色の髪と葡萄色の瞳が印象的な少女がキラ。その後を追いかけてきた濡れ羽色の髪をした青年がカナードだ、とディアッカは教えてくれた。
「こいつはエザリア・ジュール様の息子でイザークです」
そして、ついでというように彼はイザークを二人へ紹介をする。
「……手間が省けたな」
その瞬間、カナードがこう言って笑う。
「……ジュール様って、お兄ちゃんが御邪魔するお家?」
さらにキラがこう付け加えたところで、イザーク達にも状況が飲み込めた。
「なるほど。カナードさんならエザリア様も文句は言わないか」
ディアッカもそう言って頷く。
「俺としてはキラと一緒の方がよかったんだが……仕方がないな」
ホスト一軒につき一人と決まっているようだし、とカナードはため息をつきながら言葉を綴る。
「宇宙船の構造について知りたいと希望を出したのは俺だ」
そして、ホストはこれ以上望むべきもない相手といえる……と彼は続けた。
確かにそうだろう、とイザークは思う。エザリアはそちら方面でもプラントで最高峰にいると言っていい。彼女が直接彼と話を出来なくても、自宅にある資料だけでも彼にとってはよい指針になるはずだ。
「キラが行くのがお前の所だしな」
わかっているな、と彼は言外に告げる。
「……キラにケガはさせないし、変な奴も近づけないって」
安心してください、とディアッカは低姿勢で言い返した。
「大丈夫だよ、カナード兄さん。僕だって、そこまで子供じゃないから」
苦笑と共にキラが言う。
「その言葉が信用できないから、言っているんだろうが」
深いため息とともにカナードは言葉を口にする。
「まぁ、いい。そのあたりのことは後でお前にメールする」
だから、キラから目を離すな……と彼はディアッカへと視線を向けた。
「わかってますって。キラは可愛いから、絶対、変な奴に目をつけられるに決まっているよな」
大切な妹分を、そんな連中に渡せるか……と彼は言い切る。
「まぁ、そのあたりは親父の名前も使いますけどね」
だめとは言わないだろう、とディアッカは笑った。
「今更『女の子が欲しかった』と言われてもなぁ」
ものすごく困る、と彼はそのまま続ける。
「……ディが女の子だったら、美人だと思うけど?」
それにキラが真顔で言い返した。
「やめてくれ、キラ」
想像したくない、とディアッカは苦笑を浮かべる。
「でも、女装なら、兄さん達も似合うよね」
それを見て何かを考えたのだろうか。キラはさらなる爆弾を落としてくれる。もっとも、その口調はあくまでも無邪気なものだから、悪意は感じられない。
「……キラ……おばさんの前でそんなことは言うなよ?」
カナードも同じように感じたのか――それとも相手がキラだからか――苦笑と共にこういう。
「でないと、本気で服を作りかねない。俺はともかく、あの二人の女装は見たくないだろう?」
それにキラは首をかしげる。
「……ラウ兄さんは似合うと思うけど、ムウ兄さんは無理かな?」
ちょっと残念、とキラは呟く。
「代わりに、ディアッカは好きにしていいぞ」
「そんな!」
彼の言葉に、ディアッカが焦ったような声を上げる。
「……ディ。僕、おいしいケーキが食べたい」
それに少し考えた後、キラはこういう。
「ケーキ?」
「そう。それとお茶。おばさまの手作りも好きだけど、ディのお薦めも食べたい」
今回はそれで許してあげる、と彼女は笑った。
しかし、それはディアッカには無謀な望みだと言っていい。
「……イザーク、すまん」
「わかった。後で教えてやる」
いっそ、一緒に行った方がいいかもしれないな……とイザークは心の中で付け加える。少なくとも、キラの表情は見ていてあきない。今のところ、理由はそれで十分だろう。そうも考えていた。