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 全員がブリッジにそろうのはあの日以来だと言っていい。
 その中にはもちろんフレイの姿もあった。
「……とりあえず、休みたい連中は適当にしていろ。ただし、絶対計器には触れるなよ?」
 あれこれやばいカスタマイズをしてあるから、といいながら、フラガはさりげなく視線を彼女へと向ける。
「やばい?」
「少人数でも動かせるようにOSをいじって貰ったからな。急に必要以外の場所の空気が抜けるとか、まぁ、そんなところだ」
 後々大変だからな……とフラガが笑えば、事情を知らないメンバーは顔を見合わせている。
 実際の所、そこまでしているわけではない。ただ、自動防御や隔壁遮断ぐらいなのだ、と知っているメンバーはしらじらしく視線をさまよわせていた。
「ともかく、キラ君は少し休みなさい。後は私が変わるから」
 そんな雰囲気を変えようと言うのか、クルーゼがキラに言葉をかけてくる。
「そうだな。坊主は少しでも休んだ方がいい」
 いざというときに動けないと困るだろう、とフラガにも言われて、キラは素直にシートから立ち上がった。
「では、お願いします」
 素直にクルーゼに席を譲るあたり、キラも疲れているのだろうか……とその場にいた誰もが思ってしまう。
「……キラにはかなり負担をかけてたし、な」
「ここしばらく、寝る以外はブリッジにいたもんな、キラ」
 それに関してはクルーゼやフラガも同じだ。だが、体力的に見れば彼らよりもキラの方が劣っていることは否めない。そして、こういう場面における経験と言うものにおいては、段違いの差があるだろう。
「俺たちでは彼らの補助しかできないというのは事実なのだが……」
 実際に緊迫した場面になると歯がゆいものだな、とイザークが呟く。
「そんなこと言っている暇に、ちょっと場所を空けて。キラを休ませないと」
「そうですわよ、みなさま。反省なら、事が終わってからいくらでも出来ますでしょう?」
「騒いでいたら、キラが休めないだろう!」
 女の子三人組は、そんな男の子達をしかりつける。
「キラ、こっち。肩貸してやるからおいで」
 その脇で苦笑を浮かべたアスランが、キラに向かってこう声をかけていた。
「それよりも背中の方が寄りかかり易くありませんか?」
 ニコルが即座にクッションを取り出しながらこう言ってくる。
「どっちでもいいよ、俺は。キラが楽なようにすればいい」
 そんなアスランの側まで来たところでキラはどうしようか悩んでしまった。そんなキラにアスランは微笑むとこういう。
「でも、重くない?」
「今のキラならそうでもないよ。もっと太って貰った方がいいくらいだ」
 この件でまたやせただろう、と言うアスランに、キラは曖昧な笑みを返す。どうやら、それに関しては自分でも自覚しているらしい。
「キラ、食べられそうなものだけでいいから、食べるのよ」
 即座にミリアリアが声をかけてきた。
「わかっているよ……そう言えば、フレイ達には?」
 自分たちの反対側に座っているフレイとサイへと視線を向けながらキラが問いかける。
「……あいつのことなんか……」
 気にすることないだろうと、イザークが呟くのが聞こえる。だが、キラはあえてそれを無視してミリアリア達へと微笑みかけた。
「持っていってあげないと」
「わかっているわ、キラ。フレイが好きそうなものを持っていくから。でも、ちゃんとキラも食べるのよ?」
「……言っちゃ悪いけど、ミリィってお母さんみたいだよね」
 苦笑を浮かべながら、キラはとりあえずマドレーヌへと手を伸ばす。甘いものなら何とか食べられそうな気がしていたからだ。
「それって、ほめ言葉と受け止めていいのかしら?」
 同い年なのに複雑だわ、とミリアリアが口にする。
「まぁまぁ……料理は美味いし気遣いはしてくれるし……キラの気持ちもわからなくはないよ」
「そうそう、それだけ安心できるんだって、ミリィの側は」
 カズイとトールが慌ててキラの言葉にフォローを入れた。
「それに関しては俺も賛成。側にいられても苦じゃないんだよ」
 ディアッカまでそんな二人に賛同をする。
「……そう言うことにしておくわ」
 ため息とともにお皿に料理を取り分け始めるミリアリアに、
「ミリアリア様、人気者ですわね」
「私には無理なことだからな。自信持っていいと思うぞ」
 ラクスとカガリまでこう言った。
「みんなで……もう……」
 口ではこう言いながらも、ミリアリアは微笑んでいる。それだけでこの場の雰囲気が柔らかくなったのは、やはり彼女の人徳のせいだろうか。キラは口の中に広がる優しい甘みを味わいながら、そんなことを考えていた。




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最遊釈厄伝