空の彼方の虹
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応接間はミナ達が使うという。だから、ニコル達はリビングに通したと聞いた。
そう言うわけで、キラ達はそちらに向かっていたのだが。
「カガリはあっちに行かなくていいの?」
当然のように自分達に同行している彼女にキラはそう問いかける。
「ラクスがそっちに合流しているからな」
即座にこう言い返された。
「ラクスさんか」
彼女の言葉であのとき落ち着くことができたっけ、とキラは思い出す。
「お礼を言わないとだめだよね」
いろいろと教えてもらったから、とキラはカガリを見つめた。
「あいつは気にしないと思うがな」
むしろ、年長者としては当然のことだ。そう考えるだろう。カガリはそう言い返してくる。
「それでも、お礼を言うなら言った方が喜ぶかもしれないな」
彼女はそう言うと微笑む。
「そうですね。お礼を言うのは礼儀ですし」
レイもそう言ってうなずいてみせる。
「だな」
カナードなら『言え』と口にするだろう。カガリも納得をしたように続ける。
「兄さん、お菓子を作ってくるって言ったけど……間に合うのかな?」
「間に合わせるだろう、カナードさんなら」
手間のかかるのは作らないだろう、とカガリは言い返してきた。
「そうですね。クッキー生地なんかは、ストックを作っていらっしゃいましたし」
レイがすぐに付け加える。
「それって、レイの分じゃなかったの?」
キラは問いかけた。
「いいですよ。俺はオーブに食べに行きますから」
にっこりと彼は微笑んでみせる。
「ラウとギルに連れて行ってもらいます」
さらに彼はそう続けた。
「そうしろ、そうしろ。そのときは無条件で入国許可を出させるから」
カガリはそう言ってキラ越しに彼の頭をなでる。
「はい。久々にムウにも会いたいですし」
即座にレイはこう言い返してきた。
「……ムウか」
その瞬間、カガリが複雑な表情を作る。
「どうしたの?」
ムウがどうかしたのか。キラはそう問いかけた。
「いや。私達が帰ったら帰ったで、ミナ様にこき使われそうだな、と思っただけだ」
いろいろな意味で、と彼女は付け加える。
「こいつが来るときに顔を出せるか。疑問だと思っただけだ」
「その可能性はありますね、確かに」
レイもそれは否定できないのだろう。小さくうなずいてみせる。
「……ムウさんも何でもできる人だからね」
しかも、年齢的にサハクの双子と同じだ。だから、余計にあれこれと言いつけられるのだろう。
「でも、せっかく戻ってきてくれたんだからゆっくりと話がしたいな」
さらにそう付け加える。
「そうだな。そのくらいのわがままは言ってもいいと思うぞ」
そんな会話を交わしているうちに、リビングへとたどり着いた。そのままキラは中へと踏み込もうとする。
「ちょっと待て」
しかし、そんな彼をカガリが止めた。
「カガリ?」
「万が一のことがあるからな」
先に確認をさせろ。彼女はそう言う。
「どこから、あれがわいて出てくるか。それがわからない」
それが誰のことを指しているのか。キラにもわかってしまった。
「何。私が先に入るだけだ」
言葉とともに彼女は中へと踏み込んでいく。三つ数えても制止がないことを確認して、キラもまた、リビングの中へとキラもまた、足を踏み入れた。