空の彼方の虹

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「ユウキだけは殺すでないぞ」
 ギナはミゲルへとそう声をかける。
「わかっています」
 即座に彼はこう言い返してきた。
「隊長からも念を押されています。ぶん殴らないと気が済まないそうで」
 この言葉に、ギナは苦笑を返す。
「あれも本気で怒っておるようだの」
 それも当然だろう。味方だと思っていた人間に裏切られることほど腹正しいことはない。しかも,ようやく平和が訪れたと思った瞬間だからなおさらだ。
「八つ裂きにしても憂さは晴れぬというのは事実だが、バックをはかせる必要もあるから我慢すべきであろう」
 自分に言い聞かせるようにギナはそう言った。
「それは……お願いですから,殴るだけにしておいてください」
 後が厄介だから、とミゲルは懇願してくる。
「わかっておる。姉上にも釘を刺されているからな」
 さすがに、この状況で、新たな火種を作るわけにはいかない。そのくらいの分別はあるつもりだ。
「さて、さっさと終わらせるか」
 ギナはそう呟くと、前に一歩踏み出す。
「殺していけないのはユウキだけ。しかし、殺すと後が面倒だからの」
 まぁ、死なない程度には手加減をしてやろう。そう呟くと手にしていた銃をホルダーにしまう。
「ギナ様?」
 何をとミゲルが問いかけてくる。
「こちらの方が加減ができるからな」
 銃では軌道を変えるのは難しい。だが、ナイフなら直前まで微調整が聞く。
 相手を殺すかどうか、最後まで選択をすることが可能だ。
「なるほど」
 そう言うものですか、と口にしながらもミゲルが追いかけてくる。この反応の良さには満足できる。
「それに、こんな狭いところで、跳弾が怖いからの」
 ナイフであればその心配はない。そう告げると同時に、目の前にいた兵士の腕を切り裂いた。

 ドアが開く。
 反射的にカガリは手にしていた銃の銃口をそちらに向けた。
「キラ!」
 しかし、すぐにこんなセリフが耳に届く。
「兄さん?」
 キラの声に、カガリは体から力が抜けるのがわかった。
「脅かさないでください、カナードさん」
 同じような気持ちだったのか。レイが少しだけ唇をとがらせながら言葉を口にした。
「それはお前たちがたるんでいるからだろう?」
 自分だと言うことぐらい、気配で感じ取れ。ある意味、無茶なセリフをカナードは平然と口にしてくれた。
「無理」
 ため息とともにカガリはそう言い返す。
「それよりも、終わったんですか?」
 このままではいけないと判断したのか。キラが口を挟んでくる。
「ギナ様が一人でたたきのめしていった」
 あれは裏をかかれたことで怒っていたせいだろう。カナードのその言葉にカガリは苦笑を浮かべるしかできない。その状況が簡単に思い浮かんだからだ。
「ともかく、ここよりもミナ様と合流した方が安全だろうと言うことになった」
 移動するぞ、と口にしながら、カナードはキラを手招く。キラもそれに素直に従った。まっすぐに近づくと、彼に抱きつく。
「確かに、それがいいだろうね」
 ギルバートがそう言ってうなずいた。
「ラクス様のご無事も皆に知らせないといけないし」
 彼はさらにそう付け加える。
「そうですわね。確かに、今回のことを耳にした方々に安心していただけなければいけません」
 ラクスの言葉に、カガリはそう言うものかと思う。
「キラを休ませたいし、それがいいかもな」
 ならば、と思いながら彼女はこう言った。


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最遊釈厄伝