空の彼方の虹

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「まさか、本国でこの装備を身につけることになるとはな」
 手早く準備を整えながら、アスランは呟く。
「仕方がありません。相手の裏をかかないといけないわけですから」
 なだめるようにニコルがこう言ってくる。
「これならば、監視カメラの死角をつけば気づかれないからな」
 イザークもそう口にした。
「もっとも、あまり気持ちがよくないというのは同意だ」
 しかし、その後に続いた言葉は予想もしていなかったものだ。
「この後に、あんなことがあったからな」
 それが何を指しているのか。ここにいるメンバーでわからない人間はいないだろう。
「それでも、やらないわけにはいかないか」
 このままではまた戦争に逆戻りだ。だから、とディアッカがため息をつく。
「親が人質でなければ、もっと、気が楽だったんだがな」
 ついでに敵が同じザフトでなければ、と彼は付け加える。
「だが、あいつらはブルーコスモスだ」
 アスランは自分に言い聞かせるようにこういう。
「そうだな」
 同胞ではあれ、とディアッカはうなずく。
「ここで徹底的に膿を出し尽くさないと、戦えない民間人にまで被害が及ぶかもしれません」
 それだけは避けなければいけない。ニコルもそう言う。
「割り切るしかないと言うことか」
 ディアッカが複雑な表情を作ると言葉を口にした。
「そういうことだ」
 それが自分達の役目だろう、とイザークがディアッカの背中を叩く。しかし、それがずれて後頭部に当たっているような気がするのは錯覚だろうか。
「準備できたな?」
 同じような装備を身につけたミゲルがそう言いながら姿を見せる。
「隊長から突入ルートの指示が出た。今から説明をする」
 そう言うと、彼はモニターにユニウスワンの構造図を表示させた。アスラン達はそれへと視線を向ける。
「チャンスは一度だけだ。少しでもルートを外れると見つかる可能性がある」
 だからと言うミゲルに、アスラン達はうなずいて見せた。

 いい加減、おとなしく監禁されているのもあきてきた。ミナは心の中でそう呟く。
 もちろん、ギナ達が救出のために動いているだろうことは疑っていない。しかし、時間がかかりすぎているようにも感じられるのだ。
 やはり、オーブではないからか。
 ラウがどれだけの地位を確立していようと、ここにいるメンバーには及ばない。独断専行などできるはずもないのだろう。
「……困ったな」
 さて、どうするべきか。口の中だけでそう呟く。
「何だ?」
 そのつぶやきを聞きとがめたのだろう。犯人の一人がこう問いかけてくる。
「そろそろ、我慢できなくなるかもしれない。そう考えただけだ」
 何が、とは言わない。しかし、相手は勝手に誤解してくれたようだ。
「ちょっと待て」
 この言葉とともに他のものと話し合っている。
「とりあえず、入り口までは監視させてもらう」
 立て、とその男が口にした。
「わかった」
 それならばそれでいい。ミナはそう言ってうなずく。
「こちらだ」
 銃口で進むべき方向を指し示される。それにミナは素直に従った。


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最遊釈厄伝