空の彼方の虹
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「何故、許可が出ない!」
アスランはそう問いかける。
「提出書類があるからに決まっているだろう?」
即座にミゲルが言い返してきた。
「それを全部仕上げるまで帰宅禁止な」
アスランだけではない。他のメンバーも、と彼は続ける。
「責任は共同で、だ」
「それはかまいませんけど……今まで、こんなこと、したことがありませんよね?」
ニコルが即座に突っ込む。
「今まではお前らの分も俺が仕上げていたからな」
ミゲルがそう言い返してくる。
「そうだったんですか?」
「そうだよ。一度書かせたらとんでもないものを提出してくれたからな」
それを手直しさせるくらいなら、自力で何とかした方が早かった。ミゲルはさらにそう付け加える。
「なら、何で今回は……」
ディアッカが問いかけた。
「俺が隊長の分をやっているからだよ!」
アスラン達の分まで手が回らない。彼は怒鳴るようにそう告げる。
「第一、いつまでも俺が肩代わりしてやれるとは限らないんだぞ?」
さらに彼はそう続けた。
「クルーゼ隊だって、このままずっと一緒にいられるわけじゃないしな」
自分達は有能だから、と彼は笑う。
「戦争が終わった以上、ザフトも再編されるだろうし」
やめる人間も出てくるのは当然だ。だから、と言われれば納得しないわけにはいかない。
だが、本当にそれだけなのだろうか。そう考えてしまうのは、あれこれと邪魔をされたという経験があるからだ。
「まぁ、あきらめて書け。提出しても大丈夫だと思えるレベルになったら、帰っていいから」
もっとも、だめならば遠慮なく差し戻す。そう続ける。
「……仕方がないな」
イザークはそう呟くと、あきらめたようにパソコンへと向かう。
「確かに。早々に終わらせるのがいいでしょうね」
ニコルもそう言ってうなずく。
「だよな」
仕方がない、と呟きながら、ディアッカも作業を開始した。
こうなれば、自分もやらないわけにはいかない。ため息を一つ漏らすと、アスランもモニターへと視線を落とす。
しかし、彼が素直に自分の書類を受け取ってくれるだろうか。難癖をつけて差し戻されるような気がする。
結局は、自分をここにとどめたいだけではないのか。実際、未だに情報を収集する準備すらできていないのだ。
かといって、無視するわけにもいかない。
「面倒だな」
ぼそっと呟く。
「仕方がないですよ。前線に出ているよりも書類仕事が多くなるのは」
それをどう受け止めたのか。ニコルがこう声をかけてくる。
「そうだが、な」
それでも面倒なのは事実だ。アスランはそう言い返す。
「おかげで、顔も見に行けない」
誰の、とは明言しないのは、勝手に推測してもらうためだ。
「ラクスさんですか?」
それとも、と彼は声を潜める。
「キラ君ですか?」
前者はともかく、後者なら全面的に邪魔をしますよ? とニコルは続けた。
「キラではなくて、カガリの方だがな」
確認したいことができたのだ。そう続ける。
「それが、あいつにもプラスになる内容のはずなんだが」
それに、ニコルが不審そうな視線を向けて来ていた。