空の彼方の虹
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「皆様、ご無事で何よりですわ」
出迎えてくれたのはラクスだった。
「……ラクス、お前……」
「わたくしがお出迎えすることが一番よいと判断したのですわ」
カガリの言葉を彼女は微笑みで封じる。
「それとも、わたくしが信用できませんか?」
彼女はさらにこう問いかけてきた。
「誰もそう言ってないだろう?」
何故、そう言う結論になるのか。カガリは言外にそう言い返す。
「私は、いつの間にここに来たのかと言いたかっただけだ!」
アプリリウスにいたのではないか。そう続けた。
「そのくらい、何とでもなりますわ」
ふふふ、と笑うラクスは、やはりただ者ではない。
「それよりも、お疲れでしょう? おかけになってくださいな」
お茶の用意をします、と彼女は付け加えた。
「そんな悠長なことをしている場合か?」
即座にカガリは言い返す。
「余裕がなければ、判断ミスを犯します」
違いますか? とさらに問いかけられた。
「……だが……」
せめて、ミナには連絡を取りたい。きっと、心配しているはずだ。カガリはそう反論しようとした。
「ロンド・ミナ様は父とともにこちらに向かっておられるそうです」
だが、それよりも早く彼女はこう言ってくる。
「ですから、ここで待っていてください」
それが一番安全だ。ラクスはそう言って笑った。
「お前たちはそうするがいい」
ギナが口を開く。
「ギナ様は?」
すぐにキラが問いかける。こんな風にストレートに質問してもイヤミを返されないのは彼だけかもしれない。
「何。遠くには行かぬ。自分の目で周囲を確認してくるだけよ」
そうでなければ安心できない。彼はそう言う。
「なら、俺も……」
カナードがそう言いながらギナの方へと歩み寄ろうとする。
「いや、お前はここにおれ。その方がキラが安心できよう」
代わりにレイを連れて行く。彼はそう続けた。
「かまわぬな?」
そのまま、ギナは視線をギルバートへと向ける。
「本人がかまわないのでしたら、私は何も異存はありません」
ギルバートはそういって微笑む。
「だそうだぞ。どうする?」
「是非、お願いします」
間髪入れずにレイはそう言った。それに満足そうにギナは笑みを深める。
「では、少し席を外す。お前たちはゆっくりしておけ」
そうでなければ、ミナが心配をするだろう。彼女を心配させると、しばらく行動が制限されるぞ。ギナはこう言うと歩き出す。
遅れまいとしてか。レイも小走りに彼の後をついていく。
「では、お茶にしましょう。その間に、わたくしが知っていることはお教えしますわ」
ラクスは微笑みながらそう言う。
「そうだな。そうしてもらおう」
状況がわからなければ、自分もどうすればいいのかわからない。カガリもそう言ってなずく。
「私にとって、それが必要なのだろうし」
ギナもそう考えているから自分を置いていったのだろう。
もっとも、それは自分を信頼してのことではない。ここにはギルバートとラウもいるからだ。必要なら、彼らが遠慮なく突っ込んでくるだろう。
それもこれも、自分に経験が足りないせいだ。
だが、いずれは彼らにも信頼してもらえるようになってみせる。そう考えながら、カガリはまっすぐに頭を上げた。