空の彼方の虹
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「……ディセンベルは避けた方がいいだろうな」
そうなると、無難なのはタッドが市長を務めているフェブラリウスかルイーズのいるユニウスだろう。
問題はあちらもそれを予測している可能性があると言うことだ。
それでも、駐留しているザフト部隊が少ない方がいいと思える。
「キラ。先導をするからついてきなさい」
たぶん、そのくらいはバッテリーが持つだろう。そう判断をしてラウは声をかける。
『ラウ、バッテリーの残量は?』
すかさず、と言っていいのだろうか。レイが確認してくる。
「心配するな。安全な場所に誘導するぐらいはある」
後はギナ達が何とかしてくれるだろう。言外にそう告げた。
「万が一の時にはそちらに牽いてもらうしね」
苦笑とともにそう続ける。
『だから、出撃の時はノーマルスーツを来てください、と言っているのに』
あきれたように彼はそう言った。
「時間がなかったからね」
それについては、後で話し合おう。ラウはそう続ける。
『わかりました。キラさん、回線、返します』
レイの言葉に苦笑しか浮かんでこない。どうやら、それを確認するためだけに彼はキラから回線を取り上げたらしい。
「困った子だね、あの子も」
まぁ、心配してくれていると言うことだろう。そう判断をする。
「ともかく、早急に安全な場所まで移動するとしようか」
そう言うと彼らの船の前へと移動した。
慎重にルートを選ぶと進んでいく。
もっとも、相手に気づかれたのか。その先へと攻撃が流れてくる。
「しつこいね、本当に」
それだけキラ達を逃したくないのだろう。
「今の攻撃はどちらのものだ?」
そちらが彼らを拉致しようとしている者達だという可能性が高い。
『わかった。それについては任せておくがよい』
ラウの言葉に応えるかのようにギナの声が返ってくる。
『バッテリーに余裕がないのなら、足手まといです』
カナードのこのセリフには苦笑を浮かべるしかない。
「お言葉に甘えさせてもらうよ」
確かに、そう言われても仕方がないだろう。だが、何かあったときにはすぐに対処がとれるようにしておかなければいけない。
「こうなると、こういうときにもバッテリーがすぐに換装できるシステムというものを考えないといけないね」
あるいは、別の動力源を、か。
例え戦争が終わっても、MSにはまだまだ活躍の場がある。だから、そう言う研究も無駄ではないはずだ。
「もっとも、ここを無事に切り抜けてからの話だがね」
また新たな一隊がこちらに向かってきている。それはいったいどちらの陣営なのだろうか。
「……さて、今のバッテリー残量でどこまで戦えるかね」
ラウはそう呟く。
だが、その隊は彼らの脇をすり抜けていった。
「敵ではないのか?」
それとも、先にギナ達を排除しようとしているのか、と呟く。
『聞こえているな、クルーゼ』
できれば一生聞きたくないと思っていた声が耳に届く。
「……バルトフェルド隊長?」
『クライン議長の依頼だ。不本意だが手助けしてやる』
さっさと彼らを安全なところに連れて行け。彼はそう続けた。
彼に借りを作るのは不本意だ。だが、キラ達を安全な場所に連れて行くことが最優先である以上、今は妥協するしかない。
「……礼は言わないがね」
シーゲルの命令できたのであれば、とラウは言い返す。そのまま目的地へと向かうことにした。