空の彼方の虹

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 ようやく、セイラン関係者をすべて捕縛することができた。
「これで、俺はお役ご免かな?」
 ここから先は司法の仕事だろう。
 もっとも、実際に裁判が始まるのはサハクの双子が戻ってきてからになる。
 その間に、彼らを奪取しようとする者達が現れないとも限らない。
 だが、その中心となるであろうブルーコスモスは、現在、トップ不在だ。統制された行動がどこまでとれるだろうか。
「と言っても、油断は禁物か」
 トップが不在だからこそ、それを取り戻すために無謀な行動を取りかねない。
 もっとも、アズラエルと引き替えにするにはセイランでは役者不足だろう。
「カガリならば……だめだな。それではプラントが動かない」
 キラ達ならばどうだろうか。
 あの子供がいなければあちらは欲しいデーターを手に入れることはできないのだ。
 同時に、と続ける。
 あのデーターを手に入れれば、ブルーコスモスが息を吹き返しかねない。
「無事だとは思うが……実際に自分の目で確認できないのは辛いな」
 ナチュラルと言うだけではなく、他の理由でもプラントにいけないことはわかっている。それでも彼らのそばにいてやりたいと思う。
 もっとも、自分がそう考えていると知れば、彼らは余計な事を言ってくれるかもしれない。最終的にはラウあたりに笑われそうな気がする。
「それでも、心配なものは心配なんだよ」
 そんなラウも含めて、とムウは付け加えた。
「ともかく、今しばらく警戒が必要と言うことだな」
 どちらにしろ、ウズミの判断を仰がなければいけない。自分に言い聞かせるようにそう呟くと、ムウはきびすを返した。

「隊長は?」
 そう言いながら控え室にニコルが入ってくる。
「本国からの呼び出しで先に帰ったぞ」
 それにディアッカがこう言葉を返した。
 本当に彼はどこから情報を入手してくるのか。こういうことになると妙に早耳だ。
 だが、問題はそこではない。
「本国に帰られた?」
 それも一人で、とアスランは呟く。
「いったい、何があったと言うんだ?」
 ヴェサリウスで移動しては間に合わないと判断したのだろう。だが、そんな緊急事態が起きたとは聞いていない。
 あるいは、自分には聞かせないようにしていたのか。
 もし、この推測が当たっているなら、きっとキラが絡んでいるに決まっている。
「……アスラン?」
 その気持ちのまま立ち上がったアスランに、ニコルが呼びかけてきた。
「何でもない。ちょっと用事を思い出しただけだ」
 即座にこう言い返す。
「馬鹿なことを考えているわけではないだろうな?」
 イザークがとげのある口調でそう問いかけてきた。
「馬鹿なこと?」
「無許可で隊長を追いかけようとすることだ」
 にらみつけるアスランのまなざしも気にすることなくイザークは言い返して来る。
「そうだな。指示もないのに勝手な行動を取るのは許されない」
 ディアッカも打って変わってまじめな口調で言葉を口にした。
「その前に、全力で阻止させていただきますけど」
 さらに、ニコルがこう言ってくる。
「俺はただ、部屋に戻るつもりだっただけだが?」
 口ではそう言うものの、自分でも何をしようとしていたのか、自信はない。だが、こんな風に全員から非難されることはないはずだ。
「……信じられるか」
 イザークが吐き捨てるようにこう言い返してくる。
「それ以前に、俺たちはここで待機だろう? 勝手な行動は慎め」
 さらに彼はこう続けた。
「疑われて気分が悪いというのであれば、過去の自分に文句を言うんだな」
 それは正論なのだろうか。だが、気に入らないとアスランは心の中で呟く。確認だけでもいいからさせろ、と言いたいが、彼らは耳を貸してくれないだろう。
「……忌々しい」
 アスランはそう呟く。だが、それ以上、動くことはできなかった。


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最遊釈厄伝