空の彼方の虹
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本当に、余計な事をしてくれる。心の中でそう毒づきながらラウはコクピットへと滑り込む。
「一足先に戻る。艦のことは任せたぞ」
そのまま、発進の準備を始めながらブリッジへと声をかけた。
『了解です』
「それと、MS隊のことはミゲルに押しつておけ」
この状況だ。何があるとは思えない。それでも、万が一を考えれば指示を出しておかなければいけないだろう。
『そちらも了解しました』
小さな笑いとともにアデスは言葉を返してきた。
「それと、アスラン達には緊急事態で戻ったと言うだけにしておけ」
そうでなければ、自分達も行くと言い出しかねない。他の三人であればまだしも、アスランだけは同行させるわけにはいかないのだ。
『皆に口止めしておきます』
「では、行ってくる」
言葉とともにラウは機体を移動させる。
「間に合えばいいが」
他の者達も動いている以上、その心配は少ないのではないか。しかし、軍というのは外部からの干渉をいやがる。そう考えれば、隊長職にある自分がいた方がいいだろう。
「ギナ様はMS単機であそこで移動できたと言うことは、バッテリーの性能が違うのか?」
それとも機体の方だろうか。
後で確認してみよう。
バッテリーの残量が増えるなら、もっと移動が楽になるのではないか。
そうすれば、今回のようなときにもっと早く駆けつけることができるだろう。
「あの子だけは、MSに乗せるわけにいかないしな」
口の中だけでそう呟く。
「まぁ、戦争が終わった以上、その可能性は限りなく低いが」
キラが乗らなくても十分間に合うだろう。
「と言うわけで、フォローをしにいくか。そうしないと、面会禁止と言われかねないからね」
それは辛い。
ようやく、自由に会えるようになりそうなのに。そう続けた。
「私怨で結構」
ラウがそう呟くと同時に発進の許可が出る。
「ラウ・ル・クルーゼ、出撃る」
この言葉とともに、すさまじいGが彼の体を包む。だが、鍛えられた体はそれを気にすることはない。
はじき飛ばされるように飛び出した宇宙空間で、即座に自分の位置を確認する。
「さて……間に合うかな?」
あちらからも救援は出ているらしいが、とラウは呟きながら、機体の方向を変えた。
そのまま、全速で移動を開始する。
「バッテリーが切れても、攻撃をされないことだけが救いだね」
もっとも、そんな恥ずかしいことはできない。自分にも矜持と見栄がある。彼らの前で、バッテリー切れで救援される姿は見せたくない。
もっとも、ビーム系の武装を使わなければ、十分プラントまでは変えれるはずだ。
「問題は時間だね、やはり」
本当に厄介としか言いようがない。
それでも最善を尽くすべきなのだろう。
何もしないで後悔するのは、もうごめんだ。
その思いのまま、ラウは機体を操っていた。