空の彼方の虹

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「そうだな。こちらに回線を回せ」
 キラの言葉にカナードはそう言い返す。そのまま、手早くMSのコンロトールを立ち上げる。
「接近中の機体に告げる。所属を連絡されたし」
 そのまま、オーブ軍の周波数でそう呼びかけた。
『まだ、無事なようだな』
 即座にギナの声がスピーカーから流れてくる。
「無事でなかった方がよかったですか?」
 こう聞き返してしまったのは、彼の声に自分が安堵していると知られたくなかったからだ。もっとも、相手にはそんなカナードの強がりなどわかっているのだろう。
『お前とカガリだけならばの』
 低い笑いとともにこう言い返される。
『むしろ、危険をどう切り抜けるのか、見守っておったわ』
 さらにギナはこう付け加えた。
「……あなたならそうでしょうね」
 千尋の谷に突き落としてくれるんだから、とため息混じりに言い返す。
「それで、どうされるのですか?」
 これから、と問いかける。
『とりあえずは着艦したい。無理をしたからの。そろそろバッテリーが切れる』
 交換作業をしなければいけない。そうギナは続けた。
「わかりました」
 彼が合流するのはかまわない。むしろ、戦力面でプラスになる。
 何よりも、彼がいてくれることの安心感がキラにとっては必要なのではないか。
「キラ。聞いての通りだ」
 着艦シークエンスを、と続ける。
『はい』  そう言ってうなずいている彼の背後でカガリが騒いでいる声が下。しかし、カナードはそれを無視する。
「ギナ様が合流されたら、一度そちらに戻る。これからのことを話し合うからな」
 それまで、警戒を怠るな。カナードはそう続けた。
『わかった』
 キラの声がすぐに戻ってくる。
「いい子だ」
 こうささやいた瞬間、キラがどのような表情を作ったのか。それが確認できないのが残念だ。カナードはそう思う。
 間違いなく少し困ったような表情をしているはずだ。
 それを見て、カガリが複雑な表情を作っているだろうことも想像ができる。
 本当に、昔から変わらない。
 そんな変わらない日々が自分には大切だったのだ。
 だから、それを壊そうとする人間は排除する。
 相手が誰であろうと、と心の中で呟いたときだ。ハッチがゆっくりと開いている。その向こうには見慣れた機体があった。
「さて、と」
 この船には整備員は乗っていない。かといって、ギナがどこまで手を出してくれるか。
「忙しくなるな」
 まぁ、仕方がない。そう呟くと、シートベルトを外す。
 目の前で、ゆっくりとギナの機体が空いているハンガーへと固定された。同時に、ハッチが閉まる。
 すぐに空気が充填されるだろう。
「バッテリーの感想をしている間に、敵が来なければいいが」
 そのときは、自分だけで出るしかないだろう。
「ギナ様がノーマルスーツを着ていてくれるといいんだがな」
 彼といいラウといい、出撃の時にノーマルスーツを身につけないことがある。それは、己の技量に自信を持っているからだろう。
 それはわかっているが、万が一の時には困る。
 そんなことを考えていれば、センサーが空気濃度が十分だと伝えてくる。
『兄さん。作業しても大丈夫だよ』
 キラもまたそう伝えてくれた。
『手伝いに行く?』
 彼はさらにそう問いかけてくる。
「大丈夫だ。それよりも、警戒を頼む」
『はい』
 この言葉を合図に、カナードはコクピットから抜け出した。


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最遊釈厄伝