空の彼方の虹

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 近づいてくる機影がいくつか確認できる。
「……救援かな?」
 キラはカナードにそう問いかけた。
「わからん」
 そうあって欲しいとは思う。だが、その希望が判断を曇らせる可能性もある。
「とりあえず、俺はデッキに行く。音声はあれにも流してくれ」
 言葉とともに彼は立ち上がる。
「操縦は任せたぞ」
「兄さん?」
 何故、と思いながらキラは聞き返した。
「万が一のことを考えて、だ。あまり心配するな」
 何事もなければすぐに戻ってくる。カナードはそう言い返す。
「……はい」
 確かにこのメンバーの中で彼以外、MSでの戦闘経験はない。
 しかし、とキラは心の中で付け加える。
 彼がそばにいてくれないと判断に困ることがあるのではないか。
 そんなことを考えながら、無意識に視線をカガリに向けてしまう。
「カガリ。さっきも言ったが、俺が『いい』と言うまで、撃つなよ?」
 キラの視線に気づいたのだろう。カナードは念を押すようにそう言った。
「わかってる」
 しつこいな、とカガリが言い返す。
「お前にはしつこいくらいに言ってちょうどいい、とウズミ様もおっしゃっておられたしな」
 悔しければ、過去の自分の言動を反省するんだな。カナードはそう言う。
「レイ。こいつを見張っていてくれ」
 さらに彼はそう付け加える。
「はい」
 任せておいてください。レイはそう言って笑う。
「二人とも!」
 全く、とカガリはぼやく。しかし、それ以上反論しないと言うことは思い当たることがたくさんあるのだろう。
「キラ。指示は俺が出す。お前はあまりあれこれ考えるな」
 その前にギナが来てくれればいいのだが。彼はそう言いながら席を離れる。
「辛くなったら、遠慮なく言え。いいな?」
 さらにこう付け加えると、カナードはキラの頭をそっとなでる。そして、そのまま、後部のデッキへと移動していく。
「あれが味方なら、問題はないんだよな」
 カガリがため息とともにそう言う。
「ラクスが動いているんだ。味方だという可能性が高いと思うが」
 彼女はさらにそう付け加える。
「でも、思い込みも危険ですから」
 レイが即座に注意するように口にした。
「わかっている。だから、カナードさんが警戒しているんだろう」
 厄介だよな、とカガリは言い返す。
「ですね」
 そう言ってレイもうなずく。彼らはやはり、そう言う訓練も受けているのか。
 それに対して、自分は守られるだけでいいのかな。そんなことを考えながら、キラは視線をセンサーへと戻す。
「……あれ?」
 次の瞬間、思わず声がこぼれ落ちる。
「どうした?」
 即座にカガリが聞き返してきた。
「オーブの識別信号を出した機体が接近しているんだけど……」
 どう判断をすればいいのかな? とキラは首をかしげる。
「とりあえず、連絡を入れてみるか?」
 その前にカナードに確認した方がいいだろうが、とカガリは言ってきた。
「そうだね」
 カナードはもう、機体に乗り込んだだろうか。それとも、とキラは考える。だが、艦内放送ならどちらでも彼の耳に届くだろう、とすぐに思いつく。
 そのまま、マイクのスイッチを入れるために手を伸ばした。


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最遊釈厄伝