空の彼方の虹
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宇宙空間へと飛び出せば、とりあえずそれ以上の追撃はない。
しかし、いつまでもこの状況が続くはずがない、と言うことはカガリでもわかった。
「どうするんですか?」
とりあえず、とカナードの指示を仰ぐ。
「ここでしばらく待機、だろうな」
下手に動かない方がいい。彼は即座にこう言ってくる。
「これだけプラントの外壁に接近していれば、レーダーで察知されることはないはずだ」
もっとも、視認される可能性はある。カナードはさらに言葉を重ねた。
「ともかく、ここからならお前たちの端末でも連絡が取れると思うぞ」
ひょっとして、そのためにここに停泊をしたのだろうか。
カガリが心の中でそう呟いたときだ。いきなり彼女の端末が着信を告げる。
「誰からだ?」
反射的に相手の名前を確認した。
「ラクス?」
まさかと思いながらカガリは通話を開始する。
「お前!」
『ご無事で何よりですわ、カガリ』
いつもと変わらない声がすぐに返された。
『今、援軍とお迎えを用意しております。あと少し、がんばっていただけますか?』
しかし、その内容はと言えばとんでもないとしか言いようがない。
「ラクス?」
お前、とカガリは呟く。そこまでできるのかと思ったのだ。
『任せておいてくださいませ。協力してくれる方がいますもの』
自信満々といった様子でラクスは言い切る。
「わかった」
任せる、とカガリは口にした。
『では』
言葉とともにラクスは通話を終わらせる。その素早さには感心するしかない。
「とりあえず、ラクスが動くそうだ」
聞いていて想像がついていたかもしれないが。そう続けながら彼女は視線を三人に戻す。
「ラクス様なら、可能でしょうね」
レイはあっさりとうなずいて見せた。
「そうなの?」
まだラクスの本性を知らないキラだけが首をかしげている。
「あの方の人脈はギルのそれと同じくらいですから」
しかも、微妙に重なっていない。そう続ける。
「……そうか」
はやり、見た目通りの人間ではなかったか。カナードがそう呟く。
「怖い人なの?」
キラが不安そうに問いかけてくる。
「他人の権利を侵害する人間には、な」
普通に暮らしている分には怖くはないと思う。カガリはそう言い返す。
「それに、あいつはお前を気に入ったようだしな」
だから、安心しろ。そう言って笑って見せた。
「うん」
キラは納得したようにうなずいてみせる。
「デュランダルにも早めに連絡をつけないとな」
カナードがそう言う。
「本当は、ミナ様に直接連絡が取れればいいんだろうが……盗聴されても困るからな」
彼はそう付け加える。
「レイ?」
「今、連絡してみます」
レイが慌てて端末を操作し始めた。
「……ブロックされていない?」
「デュランダルのことだ。対策ぐらいしているだろう」
そうあって欲しいな、と彼は付け加える。
「ともかく、何とか逃げ回るしかないというのは事実だな」
戦争が終わったのに、と彼はため息をつく。
「まぁ、いい。ミナ様がぶち切れるのを止めなければいいだけか」
それも何だろうか。そう思わずにはいられないカガリだった。