空の彼方の虹
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どうやらあちらは強引に防護壁を突破してきたらしい。
「仕方がない。出るか」
外で何が待っているのかわからない以上、できる限り避けた選択ではある。
しかし、このまま拉致されるわけにもいかない。
そのくらいならば、自分達で何とかできるかもしれない可能性にかけた方がいいではないか。カナードはそう考える。
「兄さん」
「いざとなったら、俺があの機体で出る。お前たちはまっすぐにアメノミハシラに迎え」
途中でギナも合流してくれるだろう。カナードはそう続けた。
「兄さんはどうするの?」
即座にキラが聞き返してくる。
「ミナ様が残っているからな。何とかなる」
それに、この宇宙船がそばにいなければいくらでも採れる方法はあるのだ。
「MSは小回りがきくからな」
そして、自分はいくらでもかける場所を知っている。そう言って笑った。
「……最悪、私達の方が足手まといになると言うことか」
カガリがため息とともに呟く。
「そんなことはない、と言ってやりたいが、こればかりは状況を確認してからでないと何とも言えない」
キラ達三人だけを避難させるのも不安だし、と心の中で呟く。
「レイはギルバートさんに連絡を取ってくれ」
状況を報告しろ、と言う。
「はい」
「キラは副操縦席に。カガリは……不安だが、砲手を頼む」
ただし、と彼は続ける。
「俺が指示を出すまで、撃つな。いいな?」
念を押すようにそう続ける。
「わかってる!」
何で自分だけ、としっかりと顔に書きながらカガリが返事を返してきた。
「撃てば他の連中も追いかけてくるだろうからな」
それではいいわけができなくなる。そう続けた。
「そうですね。ギルの立場を考えても、それは避けたいです」
レイもそう言ってうなずく。
「……まぁ、そこまで行かずにすむだろう」
彼らががんばってくれるだろうから。カナードはそう言う。
「ともかく、出るぞ。ハッチを開ければ、当然、通路も閉鎖されるからな」
あちら河からの追跡は不可能になるはず。それだけでも時間が稼げるはずだ。
「……作業を始めるね」
キラがそう告げる。
「頼む」
発進準備に関しては任せておけば大丈夫だろう。
それを確認して、カナードも操縦席へと腰を下ろす。
「救難信号は出しておいた方がいいのか?」
ふっと、そんなことを呟く。
「位置を特定されませんか?」
カガリがそう聞き返してくる。
「でも、救難信号を出していれば、攻撃されないよね?」
それこそ、条約違反ではないか。キラがそう問いかけてきた。
「確かに」
カガリもそう言ってうなずく。
「だが、保護と言って連中が乗り込んでくる可能性も否定できないぞ」
カナードはそう指摘をした。
「どちらにしろ、相手の反応を見なければ判断がつかないがな」
どうするかは状況を見ながら破断をするしかない。言葉とともに操縦桿を握る。
「キラ?」
「発進シークエンスが開始されるよ」
「了解」
キラの言葉にカナードはふっと笑って見せた。