空の彼方の虹

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 目の前に並んでいるソースが信じられない。
「……これは……」
 全部が全部というわけではない。だが、その一部はかなり独特な方法で組まれている。
 そして、アスランはそうやってプログラムをしていた人物を知っていた。
「キラのプログラム?」
 そんなはずはない。
 彼らの言葉を信じるならば、キラは死んだはずだ。このプログラムを作れるはずがない。
 それとも、とアスランは渋面を作る。
「あいつがいなくなる前に用意していたものなのか?」
 可能性がないとは言わない。だが、ものすごく低いのではないか。
 第一、どうしてこれをラウが持っていたのかと思う。
 だが、それに関してはすぐに答えが出た。
「オーブから地球軍に流れたことを察知して、隊長に流れたと言うことなんだろうが」
 ロンド・ギナだけではなくロンド・ミナも来たのだから、渡される機会は十二分にあるだろう。
「……そう言えば、あちらのキラも同じようなプログラムの組み方をしていたな」
 ならば、彼が作ったものなのか。
 自分が以前見たものは、本当に簡単なプログラムだった。そのときでもそっくりと思ったが、今回ほどではない。
 それはきっと記述の長さのせいだ。
「……やはり、もう一度話をしないと」
 キラと、と続ける。
「その前に、隊長に確認をしないとな」
 問題は、彼にその時間があるかどうか、だ。なければ無視をすればいいだけだろうが。そんなことも考えていた。

 音を立てて室内に乗り込む。
「誰だ!」
 即座にユウナが問いかけてくる。
「ユウナ・ロマ・セイラン。国家反逆罪で捕縛させていただく」
 そんな彼に向かってムウがこう告げた。
「僕が? 名誉毀損もいい加減に……」
「残念ですが、セイランとブルーコスモスが癒着していた証拠はすでに挙がっています。あなた方が優秀な技術者を拉致してあちらに渡していたこともばれているのですよ」
 ムウは彼の言葉を遮ってそう言う。
「すでにご家族も身柄を確保されています。反論は法廷でどうぞ」
 さらにこう付け加えた。
「……後悔するぞ、お前……」
 恫喝するようにユウナはそう言ってくる。もっとも、その程度のことでムウがひるむはずがない。
「それも法廷でどうぞ。自分は命令に従っただけですので」
 平然とそう言い返す。
「どこの家の者だ?」
 近づく兵士達を威嚇しながらユウナはさらに問いかけてくる。
「サハクですが?」
 何か? とムウは聞き返す。
「もっと正確に言えば、メンデル出身者ですがね」
 この一言を付け加えた瞬間、ユウナの動きが止まる。どうやら、彼もこの言葉の意味を知っていたらしい。
 だが、今はそれはどうでもいいことだ。
「お連れしろ」
 ムウのこの言葉とともに兵士達が左右からユウナを確保する。そのまま、彼を引きずるように歩き出した。
「さて……後はあいつらが無事に帰ってくるかどうかだな」
 その前にできるだけゴミは排除しておきたい。そう付け加えた。
「さて、仕事の続きに戻るか」
 オーブに帰ってからものすごくこき使われているような気がする。そんなことをぼやきながら、ムウも部屋を後にした。


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最遊釈厄伝