空の彼方の虹
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背後から大きな音が響いてくる。
「大丈夫です。通路を封鎖しただけですから」
反射的に肩をすくめれば、レイが安心させるようにこう言ってきた。
「これで、ここのルートは使えなくなります」
必要な手続きを取らなければ、と続ける。それをするためにはギルバートの生態情報が必要だ。だから、侵入者にはどうすることもできない。
彼はそう続ける。
「後は、さっさと避難艇に乗り込むだけです」
それが一番被害が少ない。その言葉にキラも小さくうなずいてみせる。
「きっと、デュランダルとミナ様も動いている」
後方からカナードが声をかけてきた。
「いざとなれば、宇宙に出てしまえばいい」
彼はさらにそう付け加える。
「そうだな。そうすればギナ様が合流してくるだろうな」
そうなった場合、敵がどうなるのか。考えたくもない。カガリが小声でそう続けた。
「今だって、ミナ様が何をしているのかが怖いんだけど」
キラは思わずこう口にしてしまう。
「……深く考えるな」
ため息とともにカナードがそう言う。
「マルキオ様がご一緒なさっている。いくらミナ様でも、あの方を放り出して無茶をすることはない」
彼はさらに続けた。
「ですよね」
レイもそう言ってうなずく。
「ならいいが」
ミナが動けばギナ以上の被害が出そうだ。カガリがそう口にする。
「まぁ、馬鹿を一掃してもらえるならそれでもかまわないがな」
カナードのこの言葉に、レイとカガリはうなずいた。
「……僕は早くアメノミハシラに帰りたい」
キラはぼそっと呟くようにこう言う。
「ミナ様の用事が終われば帰れるさ」
もうしばらくの辛抱だ。そう声をかけてくるカナードへと視線を向ける。
「帰ったら好きなもんを作ってやる。だから、我慢できるな?」
「……それでごまかされる子供じゃないんだけど」
キラのこのセリフはあっさりと笑い飛ばされてしまった。
目的地にあったのは予想外のものだった。
「……アマノトリフネ?」
キラが驚きを隠せないといった声音でそう告げる。
「いや、一回り小さいな」
カナードもまた、目の前のそれを観察しながらそう言い返す。
この大きさであれば、アマノトリフネほど人数を必要とはしないだろう。だが、MSなら一機程度は積み込める。
「これが脱出艇なのか?」
カガリがレイに問いかけている声が耳に届く。
「いえ。ごく普通の機体でした。まぁ、多少の武装はしていますが」
ここまで本格的なものではなかったはず。レイはそう続ける。
「ギナ様の仕業だろう」
カナードはそう言う。
「あるいはミナ様か。どちらにしろ、これの方が安全だと判断されたに決まっている」
丈夫だろうし、武装もしっかりとついている。
「操縦もキラができるしな」
いざとなればこれでアメノミハシラまで帰れ、と言うことか。カナードは心の中でそう呟く。
「ともかく乗り込むぞ。詳しいことは中に入らないとわからない」
この言葉とともにカナードは三人に目の前の宇宙船に乗り込むように指示を出す。それに三人は素直に従った。