空の彼方の虹

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 執事からの報告に、ギルバートは眉根を寄せる。
「まさか、この時に」
 そのまま、口の中だけでこう付け加えた。
「問題は、どちらの犯行か、と言うことだね」
 ブルーコスモスか、それともあの男か。
 どちらにしろ、最後の悪あがきと言ったところだろう。
「……彼らが帰ってくれば、すべては終わる」
 その前に何とかしようと考えているはずだ。
「旦那様」
 執事がそっと呼びかけてくる。
「心配はいらない。レイとカナード君がいるからね。カガリ姫もあれでなかなかの戦士だ」
 そして、彼らが暴走しそうになってもキラが止めるだろう。
「この状況でなければ、ラウに動いてもらえるのだがね」
 彼はまだ戦場だ。
「仕方がない。かなり怖いが、ミナ様に連絡をするしかないか」
 知らせなければ、知らせなければ厄介だろう。
「ギナ様の方が直情的なだけつきあいやすいね、本当に」
 皆は何をしでかしてくれるか。自分の想像を超えたことをやらかしてくれそうで怖い。もちろん、政治家としては彼女のそのような態度は尊敬に値するのだが、とギルバートは心の中で呟く。
「それよりも、別邸の方を至急整えてくれるかね? 本宅はしばらく使えまい」
 ため息とともにギルバートはそう告げる。
「皆、疲れて帰ってくるだろうしね」
 ゆっくりと休める環境は必要だろう。
「すでに手配しております」
 執事は即座にこう言い返してくる。
「さすがだね」
「お褒めいただき、光栄でございます」
 執事はこう言って頭を下げた。
「他に、何かご指示はございますか?」
 そのまま、彼はこう問いかけてくる。
「今のところはないね」
「かしこまりました。それでは、私めはこれで失礼をさせていただきます」
 彼はそう言うと、部屋の外へと出て行く。
「さて……」
 それを見送りながら、ギルバートはつぶやきを漏らす。
「ミナ様には直接連絡を入れるべきか……だが、取り次いでもらえない可能性があるな」
 むしろメールの方が確実だろう。
 問題は相手がいつ確認をするかわからないと言う点だ。これに関しては、少しでも早く伝えたい。
「……まずは通信を入れて、それでだめならばメールだね」
 気は重いが仕方がない。ギルバートはそう呟く。
 そのまま手を伸ばすと端末を取り上げた。そして、記憶していたミナの端末を呼び出す。
『私だ』
 即座に言葉が返される。
『何があった?』
 本当に彼女は怖い。ギルバートはため息をつく。
「屋敷が襲われたそうです。申し訳ありませんが、そちらの用事が終わられましたら別宅の方へと向かっていただけますか?」
 今から地図を送る。誰に聞かれても困らないセリフだけを口にした。
『難儀だな。わかった。世話になっているからな。こちらからも人員を出そう』
 それが屋敷の修理に関してではない、とすぐにわかる。
「よろしくお願いします」
 だから、とギルバートは言葉を返した。


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最遊釈厄伝