空の彼方の虹

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 ギナはもう、戦場になるであろう宙域にいた。
「……予想以上にMSの数が多いな」
 オーブより届いたデーターをチェックしながら、彼はこう呟く。
「ナチュラルに対応できるOSを構築できたとは思えないが」
 だとするならば、あれを操縦しているのはコーディネイターと言うことになる。
「また、いらぬソウキスを増やしたのか?」
 自由に利用できる道具として、とギナは眉根を寄せた。
「もっとも、あれらにはそれが当然なのかもしれんが」
 ナチュラルに逆らうと言うことを考えられないよう、最初からすり込まれてしまうのだ。しかし、そんなソウキスを見ているといらつくというのも事実。
 しかし、彼らにとってはそれが当然のことなのだ。だから、あえて口は出してこなかった。
 だが、それに自分達――いや、キラが巻き込まれるかもしれないとなれば話は別だ。
「姉上の話であれば、ウズミとムウがセイランにとどめを刺す気満々らしいからの」
 あれらが片付けば、オーブ国内のことはほぼ終わったと言える。
 後は、と改めて地球軍の動きを確認しながら付け加えた。
「ブルーコスモスにとどめを刺すことか」
 そうすれば、もっと自由に動けるだろう。
「プラント側も、少しは考えを改めるかもしれん」
 確かに、あの技術を使えば第三世代以降も誕生するだろう。しかし、それだけではいつか行き詰まる。
 ナチュラルと共存する以外にコーディネイターに未来はないのだ。
「まぁ、そう言うことを考えるのは私の役目ではないがな」
 ウズミ達に押しつけておけばいい。
 それよりも、目の前の敵を何とかする方が優先だろう。
「さて……どこで介入するのが効果的かの」:  にやり、と笑いながらそう呟く。
「少しぐらいは楽しんでよかろうよ」
 この表情を見るものが誰もいなくてよかったのではないか。そう指摘するものは、誰もいなかった。

「いったい、どこで介入してくるか」
 ラウはそう言ってため息をつく。
「間違いなく、近くにいるはずだしな」
 ギナが、と付け加える。いや、彼だけならばいいが、それにカナードとカガリがくっついてきていたらどうするのだろうか。
 だが、その考えをラウは早々に否定する。
 キラがいる以上、二人が無理をするはずがない。
 その上、現在、プラントにはロンド・ミナもいる。
 あの二人が彼女を無視して動けるとは考えられない。いや、考えたところで先回りしたミナに止められるに決まっている。
 だから、自分は戦闘に集中すればいい。
 そうなると、別の問題が浮上してくるな。ラウは心の中でそう付け加えた。
「うちの隊は最新鋭機をすべて保有しているからね。他の隊から恨まれているという話だ」
 どこまで協力をしてもらえるか。それが不安だ。
 個人的感情を抑えてくれると嬉しいのだが。そうも付け加える。
「まぁ、無理だろうね」
 自分ができていないのだから、と苦笑とともに呟く。
「さて……この衝動を抑えきれるかね」
 かなり危ないような気がする。しかし、今、優先すべきなのはそれではないのだ。
 自分に言い聞かせるようにそう口にした。
 そうしておかないと、背後からアスランを撃ち落としたくなる。
 混戦になればなるほど、チャンスが大きくなるのだ。そして、アスランの動きを予想するのはたやすいことだと言っていい。
 そこにあらかじめミサイルを撃ち込んでおくぐらい簡単なことだ。
 しかし、とすぐに思い直す。
 そのようなことにミサイルを使うことはもったいない。何よりも、ギナが乱入してくるなら、彼がやるに決まっているはずだ。
「お楽しみは取っておかないと、文句を言われるだろうからね」
 苦笑を深めると、ラウはそう呟いた。


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最遊釈厄伝